「趣味は、“ゲーム”と言っていいんですか?」筆者・青木勝美

夏休み前の時期、面接の指導のために、学校に出向くことが多くなる。
前半は、入退室の所作や挨拶・礼(お辞儀)の仕方、質問例など、
一連の動作確認と答え方を説明する。
後半は、模擬面接(10人以上の場合集団面接形式)となる。
以下は、その一場面。

先頭の生徒がドアを3回ノック。
面接官役の私が、教室の中から「どうぞ」と声をかける。
生徒はドアを静かに開け、「失礼します」とあいさつし、椅子の横に立つ。
続いて4人が入室し、それぞれの椅子の横に立つ。
全員揃ったら、「学校名とお名前をお願いします」と面接官役の私。
面接練習をすることが初めての生徒たちなので、声が小さく、
学校名も名前もはっきり聞こえず、各自声のトーンを上げて何度かやり直し。

続いて一つだけ質問をする。質問は、生徒たちの総意で選んでもらう。
「学校生活のこと」または「趣味について」、
どちらかを選ぶケースがほとんどである。今回は、次の通り。
「趣味は何ですか」
「あ、はい、私の趣味は、ゲームです……。あ、以上です」
「どんなゲームですか」(ツッコミを入れてみる)
「はい、……」(答えられず)
これが、最初の生徒の受け答えである。
2番目、3番目の生徒も“ゲーム”に挑戦してくる。
最初の生徒よりも会話は続くが、ツッコミを入れると答えに窮する。
次の5人は、さすがにゲームは避けるかと思いきや2人が挑戦。しかし、早々に撃沈。
他の生徒は、読書、音楽鑑賞、プラモデル作りなどと答えてくれた。

準備を全くしていない段階なので、当然ながら具体的な内容を伝えることはない。
しかし、大人との話し方や、
会話における表現力の必要性を考えるきっかけになったと思っている。
さらに、生徒に対して、趣味を聞く目的は、
緊張感を和らげるためと人柄を知りたいためである。
例えばゲームと答えた場合、君たちが言うゲームとは、
PCやスマホを使ったバーチャルな空間で繰り広げられるものであることは想像できる。
しかし、ゲームと呼ばれるものは、多種多様である。
面接官は、君たちとの年齢差もあり、それに対する体験も知識も乏しいと思ってほしい。
ゆえに、ゲームの面白さ楽しさ、さらにゲームで得られたものは何かを
具体的に伝えられれば、コミュニケーション力があり、魅力ある人物として判断される。
読書、音楽鑑賞も同様である。しかし、睡眠時間を削り、
学校の勉強を疎かにしているようでは、本末転倒であると釘をさしておく。

今年度からの「全国高校統一応募用紙(履歴書)」からは、趣味・特技欄が削除されている。
昨年度まで、この欄にゲームと書いていた生徒が多数いた。その度に、
上記に書いたように、そこから得たものを具体的に説明できるように指導していた。
ゲームは、脳の活性化になるとの研究結果が発表されている。
また、eスポーツは、今年世界大会が開催され、
近い将来オリンピック種目に押し上げられようとしている。
電子機器の操作に通じることとプログラムの知識を得ることは、
これからの社会に生きるために大きな力になることは確かである。

ゲームを単なる遊びから、仮想空間を通じて世界観を広めるツールになると、
認識をあらためるべきなのか。昭和の生まれの私は、全く興味はないのだが。

【プロフィール】
1983年4月より群馬県公立高校教員として勤務
学科主任、学年主任、保健主事、進路指導主事等歴任
2019年、平成30年度 専門高校就職指導研究協議会全国発表
2022年3月、群馬県公立高校教員完全定年(再雇用含む)
2022年4月よりライセンスアカデミー東日本教育事業部顧問として、
おもに就職関係の進路講演、面接指導等を各学校で行う