「美味しいお寿司の握り方」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

ビックコミックスピリッツ連載の『美味しんぼ』は、誰もが知るグルメ漫画です。
その初期の作品に「美味しいお寿司の握り方」をテーマとしたものがあり、
記憶に残っています。内容は寿司職人の握り比べで、
「同じネタとシャリで握ったお寿司の、どちらが美味しいか」というものでした。
結果は、寿司をCTスキャンに掛け、
米粒と米粒の間にできた隙間の違いを指摘した上で、
「寿司っていうのは米粒と米粒の間に適度な空気を含んでいないと、
舌の上でほろりと崩れない」と言って、空気層の少ないシャリで握られた寿司を
「ただのネタとシャリの塊だ」と一刀両断した、そんなお話でした。

では、なぜ私がこの話を覚えているかというと、
「文章も似ているなぁ~」と思ったからです。
物書きを志す者の一人として(当時は、まだ何も書いていませんでしたが)、
読みやすい文章とはどういうものか、
谷崎潤一郎や井上ひさし、本田勝一などによって書かれた文章読本を
読んでいました。中でも、本田勝一がノーベル文学賞受賞作家の文章を
「一文が長過ぎて、読みにくい悪い文章の典型」として
バッサリと批判していたのを覚えています。
結果、読みやすい文章って隙間なんですね。
漢字とひらがな、点と丸のバランス、行替えでできる空間、
それが大切だったのです。コツは「空間」にあったのです。
お寿司の握り方と一緒です。

でも、最近のお寿司はどの店に行っても美味しくなりました。
と言っても、私の行くのは回転寿司ですが……。
シャリの握り方がフワフワで、まさに美味しんぼレベルになっています。
と思ったら、機械で握っているんですね、今の回転寿司は。
そういえば、最近書かれている文章の多くはAIが作っているとか。
人間よりAI、という時代が来たように思います。
頑張れ、人間! って感じです。

それじゃあ、人間にできることって何?
それは「相手に喜んでもらいたいと思う心」ではないでしょうか。
お寿司を食べてもらうときの気遣いであるとか、
面白いと思ってもらえる内容の文章だとか、
相手のことを思う気持ちから生み出されるものが大切なのです。
だから、これから重要になることは……。それはAIやロボットにはできない、
人の心をつかむ「慮(おもんばか)る力」を育てる教育にあると考えます。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam5/