「総合学科高校の変遷から今後の展望を考察する 11」筆者・日本大学商学部 准教授 玉川弘文

総合学科において活用される諸制度の第3回目は、
「専修学校における学習成果や技能審査の成果の単位認定の活用」である。
本テーマは、前回(2025年10月3日掲載)の「学校間連携」の補足を兼ねながら、
「持続可能な地方創生」に、学校はどのようにかかわるか述べる。

歯止めがかからない少子化は、
公立高校の学級数の削減や各学校の教員数の減少を引き起こす。
それは、学校間の進路指導及び学習指導の教育格差、生徒の学習意欲の低下、
学校の発展的統合(統廃合)につながる。
この原稿を書いている9月に、熊本県教育委員会は
2034年までに県立高校の62学級を目安に削減する提言をした。
まさに、学校の発展的統合(統廃合)である。
学級数が減少すると教科の合計単位数の多い教員が残る。
地歴科、公民科、理科、芸術等の教科は生徒の興味・関心に応じた
多様な選択を十分に保障できる科目であるが残らない。
これでは卒業後の長い人生を、
どう幸せに過ごすか問う「キャリア教育」が保障できなくなる。
多くの総合学科は、専門学科や普通科の教育困難校などの
定員割れの学校が発展的統合(統廃合)によって誕生した。
そのような学校は、いまでも専修学校への進学指導が多い。
 
私が、都立高校初の「専修学校との連携での単位認定」をおこなった、
単位制総合学科の都立K高校の実践を紹介する。
K高校では、ビジネス、英語、美術、福祉の系列を専修学校と協定を結び、
全生徒が1単位を修得して、卒業単位74単位に加算した。
生徒は、自分の将来に就きたい職業や上級学校を考え「キャリア教育」を実践した。
生徒の中には、学校の授業時間外に、専修学校の科目履修生として、
専修学校の学生や社会人と共に学び、授業以外で卒業単位を修得した。
また簿記、情報処理、英語等の検定試験に合格、
技能審査の単位修得として、卒業単位74単位に加算した。
技能審査は、主体性を育てながら自宅での学びを継続させる。
分からない内容は先生に質問するため、登校の一助に有効であった。
教育委員会はその結果を、高校改革の一つの試みとして大いに評価し、
他校からの視察や協定にかかわる電子データを頂けないかとの問い合わせには、
無償で提供した。

地方の小さな市町村での専修学校の経営は困難である。
これからはオンライン等の遠隔授業の導入と土日等の出張授業等で、
専修学校との連携とその延長に技能審査を取り入れ、
進路指導及び学習指導の教育格差を解消すべきだ。
高校では学べない専門性、専修学校の年上である学生と社会人との学びや異年齢交流は、
教科書では学べない体験であり、不登校への歯止めとなる。
地元から若者が離れないための対策にもなる。
特色をだしたい! 生き残りたい! 地方創生の人材を育成したい!
そのような学校は、専修学校との連携と技能審査をすぐに実行するべきである。

【プロフィール】
日本大学商学部准教授
1985年より東京都立高校に勤務
北地区チャレンジスクール(現・桐ヶ丘高等学校)開設準備室 教諭、
北地区総合学科高等学校(現・王子総合高等学校)開設準備室 主幹教諭、
晴海総合高等学校 校長 等を経て、2023年より現職