前回まで総合学科高校の不人気に間接的な影響を与えていると
私が考える科目の一つ、「産業社会と人間」について述べてきた。
今回は大学の卒業論文に相当する「課題研究」について説明する。
平成5年、文部省高等学校教育の改革の推進に関する会議は
第四次報告において、課題研究の目標を、
「多様な教科・科目の選択履修によって深められた知的好奇心等に基づいて
自ら課題を設定し、その課題の解決を図る学習を通して、
問題解決能力や自発的、創造的な学習態度を育てるとともに、
自己の将来の進路選択を含め人間としての在り方生き方について考察させる」と示した。
私の経験から「問題解決能力や自発的、創造的な学習態度を育てる」ことや
「自己の将来の進路選択を含めた人間としての在り方・生き方を考察する」ことは、
キャリア教育に繋がり、これからの予測困難な時代に対応する能力を育てる科目として
期待していた。しかし、「期待通りの成果が得られていない!」と、私は受け止めている。
生徒に研究したいテーマがあっても、
教員の経験や専門的な知識不足のために適切な指導ができず、
学習環境や設備・備品等の不足などの理由をつけて、教員の都合のよい方向に導いてしまう。
その結果、生徒がやる気をなくしてしまうケースがみられる。
その背景には、自然体験・社会体験・生活体験を関連づけ、
分析し、統合する「経験」が教員に不足していることがある。
また、卒業論文を書かずに卒業している教員の場合、
テーマから仮説を立て結論に至るまでの指導助言が適切にできるとは言い難い。
解決策は、生徒と教員が大学やNPO法人等のコーディネートを受けることである。
大学等への引率から、最先端の教育にふれながら
キャリア教育や今後の社会の姿を創造させる活動につなげることを切望する。
【プロフィール】
日本大学商学部准教授
1985年より東京都立高校に勤務
北地区チャレンジスクール(現・桐ヶ丘高等学校)開設準備室 教諭、
北地区総合学科高等学校(現・王子総合高等学校)開設準備室 主幹教諭、
晴海総合高等学校 校長 等を経て、2023年より現職