「総合学科高校の変遷から今後の展望を考察する 5」筆者・日本大学商学部 准教授 玉川弘文

今回は、「産業社会と人間」の続きである。
私も担当した本科目の主たる業務は、下記の3点である。

(1)授業計画・立案とその周知
毎回、授業担当者を集め、授業の前日までに
略案を使った、あるいは略案なしでの授業の進め方と配付資料の確認をする。
その理由は、本授業の担当教員の9割は、高校時代学習経験がなく、専門教員がいるわけでもない。
検定済みの教科書もなく、学校によっては4月に着任した教員が、ティームティーチングによって指導をする。

(2)教科書や配付資料
教科書等は、教員が生徒や地域の実態、学校目標、本科目の目標から作成する。
学習内容は隔年ごとに改訂しなければ、時代から乖離する。しかし、この作成作業が続かない。
教師の教育実践・経験と思いが授業を通して生徒の学習意欲や学びに影響する。
つまり、授業の質が属人的になってしまうのだ。

(3)招聘者(当時は、市民講師と呼んでいた)の書類作成と打ち合わせ
これが煩雑で、当時は、戸籍謄本抄本が必要書類であった。
仮に本籍地「広島」ならば、休暇を申請し取りに行っていただいた。
不愉快な思いをさせて、揉めた経験がある。
現在は簡素化されているが、スムーズに終わらない業務である。

多くの学校は、担当の委員会が上記の業務を行っている。
委員会は、メンバー全員が出席するはずが、一人、二人と欠席や遅刻が続くと不満をもつ教員が増える。
その結果、なぜか委員長の業務が増え、
委員会メンバーの公正・公平な分担での継続した活動ができないことが多い。
総合学科の存在意義を担う根幹の科目が、お荷物扱いされてしまう。

心の中で「教育は人なり」と、叫んだものだ。

【プロフィール】
日本大学商学部准教授
1985年より東京都立高校に勤務
北地区チャレンジスクール(現・桐ヶ丘高等学校)開設準備室 教諭、
北地区総合学科高等学校(現・王子総合高等学校)開設準備室 主幹教諭、
晴海総合高等学校 校長 等を経て、2023年より現職