「総合学科高校の変遷から今後の展望を考察する 4」筆者・日本大学商学部 准教授 玉川弘文

普通科と専門学科との短所を改善するために誕生した「総合学科」が、
なぜ、学力入試の倍率が低く、人気がないのか?
総合学科に入学した生徒が履修する3科目が、間接的に影響している。
今回は、そのひとつ「産業社会と人間」について述べる。
本科目は、普通科の就職指導と専門学科の進学指導が不十分という指摘を受け、
高校卒業後の進路を見すえた2・3年次の履修科目を選択し、
キャリア教育の充実を図る科目として誕生した。
その際、地域、学校及び生徒の実態等に応じ学習活動を行う。

その内容は、
(1)適性検査・ボランティア等から自己の適性を知る。
(2)技術革新の進展や産業・就職構造を知るために、企業見学や職業人インタビュー等を行う。
(3)大学への進学希望に応えるため、保護者・生徒との上級学校の見学・授業体験をする。
上記の学習によって、科目の目標、
「将来の職業生活の基礎となる知識・技術等を修得させ自己の将来を考えた自己実現」
が図れ、「自分探しの旅」が実現できる。

同科目において、2年次の科目選択・履修登録「自分だけの時間割」を12月中旬までに決める。
しかし、履修科目ガイダンスを5月連休後、科目選択の面接を5月末から始め、
2年次科目履修登録を11月に終了する学校がみられる。
ということは、科目選択・履修登録の時点で学習内容の(1)~(3)が不十分であり、
(2)と(3)は生徒の希望を十分に反映せずに実施している。
高校卒業の進路を見すえた科目履修ができず、楽しそうな科目や5教科科目に流れる。
専門科目は履修者が少なく開講がままならない結果となる。

【プロフィール】
日本大学商学部准教授
1985年より東京都立高校に勤務
北地区チャレンジスクール(現・桐ヶ丘高等学校)開設準備室 教諭、
北地区総合学科高等学校(現・王子総合高等学校)開設準備室 主幹教諭、
晴海総合高等学校 校長 等を経て、2023年より現職