私は将棋が好きなので、早指しを見たり、棋譜を追ったりしています。
そんなとき、解説の方がAIの示す予想手に対して、
「人間では指せません」と言われることがあります。
当たり前のことですが、コンピュータは優れた演算能力を有しています。
そのため、何か問題が起きたときに、その対処した結果をコンピュータで検証すると
「そのように対応するのは間違いで、こうするのが正しかった」と言われたりします。
でも、コンピュータが時間をかけて導きだした結果って、
それと同じことを人間がしようとすると、途方もない時間が掛かってしまいます。
問題が起きたときは時間が勝負。だから、人は瞬時のうちに判断、行動しなければなりません。
たとえそれが最善手にならなくても、間違った判断ではない好手・妙手を。
分かりやすい例をあげると、
「サッカー等のスポーツでボールをパスされたとき、それをどうするか」です。
こんなこと、時間をかけて考えるわけにはいきません。
このように、一瞬で優れた判断をするために大切となるのが「直観力」です。
そんな直観力を磨くためには、正しく判断する訓練・練習をするしかありません。
勝手に体が動くように、体に叩き込んでおかなければならないのです。
それはスポーツに限らず、仕事においても同じことです。
ただ、直観力は一朝一夕に身につくものではありません。
専門分野において優れた直観力を働かせられるようにするには、弛まぬ努力が必要です。
長期に及ぶ真剣な努力を続けなければ手に入らないものなのです。
もしそれが中途半端なものだったら、逆に「いい加減な判断」となり、
間違った判断に繋がってしまいます。
人間が思考するときには「こうしたら、こうなる」という論理的な流れをもって考えます。
それに対してAIは、実は何も考えていないのです。というのも、AIは
「その条件による全ての可能性を検討し、その中の最もよい結果」を探しているだけだからです。
このように、答えを導きだすプロセスが人間とAIでは違っているので、
冒頭の解説者が「人間では指せません」と言うことになってしまうのです。
最近のAIはとても優れています。
だから、あらゆる場面で人々はAIを頼るようになってしまいました。
でも、いくらAIを駆使したところで、それが人間の直観力を高めることには繋がりません。
どうやらAIに頼り過ぎると、
とんでもないこと(人間の判断力が鈍ってしまう等)になってしまいそうです。
今、人々に求められているのは人間にしかできないこと、
すなわち「直観力を磨く」ことではないでしょうか。
それを実現するため大切なのは、先ずは「論理的な思考力を高めること」、
そしてそれを直観力へと昇華させるために「訓練・練習し続けること」でしょう。
私は、学校教育において重要なのは「優れた直観力を身につける教育」だと考えます。
【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam5/