「生徒の決意と迷いを前に(前編)―大学か専門学校か―」筆者・小林英明

私が参加している教員の進路指導研究団体は専門学校見学会や研究会の際、
学校理解の一環として学校の協力で現役学生との懇談の場を持つ。
今年もある専門学校の学生の話を聞く機会があった。
高校教員の研究会なので学生諸君は学科やコースの他に
出身高校も含めて自己紹介をしてくれる。
一人の学生が近年特に大学進学に積極的になったと聞いている学校名を口にした。
そこでクラスで何人くらいが専門学校に進んだか尋ねると、
2~3人との答えだった。さらに
「先生や家族から大学進学を勧められたりしませんでしたか」
と質問を続けると、
「そのようなことはなく、みんな応援してくれました」との答えだった。
私はこのような機会があると進学校出身の専門学校生にはよくこの質問をする。
それは、実際に私が言ったことが進路指導の現場ではしばしば起きているからだ。

だいぶ前になるが、私達の研究会とも交流のある
専修学校の団体が開いたシンポジウムで専門学校の体験授業と
高校時代の進路選択に関する高校生、専門学校生、専門学校卒業生の
パネルディスカッションがあった。冒頭にパネリストが
それぞれの専門学校、学科やコースを選んで入学に至った経緯を語った。
その時、進学校出身の一人の専門学生が進学にあたっての苦労話を披露した。
その学生は自分の将来の夢の実現へ向けた第一歩として
専門学校での資格取得と技術の習得を目指していた。
しかしクラスメイトのほとんどが大学進学を希望する環境の中、
家族も担任も大学進学を勧め、自分の専門学校進学を支持支援してくれる人は
誰もいない中で孤軍奮闘、両親や担任を説得した話だった。
会場には専門学校関係者が多いこともあり、笑いと拍手が起きた。
私も思わず拍手をしたものの心の中は少々複雑だった。

その時からさらに十年以上前のことだが私自身が
「その高校の先生方と似たようなこと」をしていたからだ。
当時、現代風に言えば「年内入試」での大学進学者が多い学校で
担任をしていた私のクラスに専門学校進学と大学進学の間で
迷っている生徒がいた。成績では学年のトップグループだが
面談ではなりたい職業の資格を得るため専門学校に行きたい気持ちと
大学に行ってもっといろいろなことを勉強したい気持ちがあると言った。
学年会でもその生徒の進路選択は話題になり、他の担任からは
「大学の学習に十分対応できる学力がある。
迷っているならここで専門学校に行って将来を決めてしまうのはもったいない。
大学で学べば可能性は広がる」という意見もあった。
私自身には専門学校進学を否定する気はなかったが
「可能性は広がる」という言葉には心が動いた。
結局私は大学進学を勧める方向のアドバイスをし、
生徒は指定校推薦で経営系の学部に進学した。

後編へ続く

【プロフィール】
元都立高校進路指導主任・
多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与/
キャリア教育支援協議会 顧問
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。