修学支援新制度の法律(大学等における修学の支援に関する法律)の改正は、
大きな議論もなく、3月末に国会で成立し4月1日より施行された。
前回(2025年6月17日掲載)は、その目的規定について、
少子化が削除され、本来の教育機会の均等は明記されなかったものの、
教育費負担の軽減が目的とされたことを指摘した。
それ以外の大きな改正としては、
従来この法律で授業料減免と給付型奨学金の両者を規定していたが、
給付型奨学金については、日本学生支援機構法で規定するように整理したことである。
これは法律的にはすっきりしたかもしれないが、
授業料減免と給付型奨学金が新制度の2本の柱であることが
見えにくくなるということも言えよう。
しかし、これまで本コラムでも再三再四指摘してきたように、
制度の目的規定だけでなく、新制度の設計自体も、
十分な検討を経ず急拵えのため、多くの問題点を含んでいる。
このため、法案の附則第3条に4年を経過した後に見直しの規定が制定された。
しかし、これまでのところ、実際の見直しは、
「機関要件の厳格化」と「成績要件の厳格化」および
「多子世帯や中間層などへの支援の拡充」にとどまっている。
これについても、改正案では、附則第6条に4年を目途として同様の規定が定められた。
つまり、今後も制度の見直しが続けられていくことになる。
ただ、こうした制度の詳細な設計は、修学支援法には規定されておらず、
施行令や施行規則といった政令や省令で詳細な規定がなされている。
これらについては、今後どのように改正されるのか、
それともされないのか、現時点では見通しがつかないが、
こうした政令や施行規則についても十分目を向けていく必要がある。
【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。