(※編注:本コラムは6月中旬に執筆いただきました)
ジェラートが恋しくなる季節になりました。
今年は、例年の“食べる暑さ対策”に加えて、
猛暑を乗り越えるべく冷感タオルと卓上ファンを新たに購入しました。
さて、学級の集団づくりが進んできた6月ごろ、
多くの生徒たちはルールに沿って学校生活を送り、
先生方も温かいまなざしでその姿を見守っている時期と思います。
少しずつ教育活動の成果も実感できるころではないでしょうか。
このような学級では、「親近・受容性」の勢力資源を背景にした
「参加的リーダーシップ」によって、生徒の自律性が高まり、
仲間同士の協働も活性化しているでしょう。
その結果、学校生活に対する意欲や士気が向上し、
学級全体に一体感が生まれていると思います。
このような状態を「十分に良い」と評価する先生もいらっしゃるかもしれません。
しかし、SL(Situational Leadership:状況対応型)リーダーシップの視点からは、
さらに一段階上の学級集団を目指すことができます。
それは、生徒自身が学級自治を担う学級です。
私自身、中学3年生のときにそのような学級を経験しました。
卒業から47年が経った今でも、3~4年に一度、
クラスの半数近くの約20名が集まって同窓会を開いています。
その学級での経験が、私が教師を志した原点にもなりました。
学級自治が機能している学級では、「先生に言われたから」ではなく、
「自分たちで学級をつくっている」という当事者意識が生徒に芽生えます。
ここで教師に求められるのは、「委任的リーダーシップ」です。
リーダーシップを生徒に委ねることで、
生徒一人ひとりが自分なりのリーダー性を発揮して、学級に貢献しようとします。
教師は目立たない形で支えながら、生徒が成功体験を得られるように導くのです。
その結果、生徒は自己有能感を高め、自信を身につけていきます。
「委任的リーダーシップ」では、教師は指導や援助を抑えることが必要なのです。
ここまで、SLリーダーシップと勢力資源について述べてきました。
大切なのは、学級集団の発達段階に応じて、
教師のリーダーシップを柔軟に変えることです。
そして、その際に「どのような勢力資源を活用するか」を意識することが、
より効果的な実践につながります。
最後に、SLリーダーシップと勢力資源を活かした教育活動を
効果的に進めるコツをお伝えします。
それは、「学年」や「学校」といった組織単位で取り組むことです。
近年では、さまざまな専門性を持つ人々が連携して、
子どもたちを支える「チーム学校」が注目されています。
一人の教師がすべての勢力資源をもっている必要があるとは限りません。
教職員がそれぞれの強みの勢力資源を生かし、
互いに補い合いながら取り組むことが、よりよい教育活動を生み出す鍵になるのです。
もちろん、即効性が求められる場面では、
「正当性」や「罰」、「熟練性」や「明朗性」といった勢力資源を背景にした
リーダーシップが必要になることもあります。しかし、常にそれらに頼るのではなく、
「準拠性」や「親近・受容性」に基づくリーダーシップ、
すなわち教師自身の人間的魅力を発揮することが、教育において極めて重要です。
熟練性も人間的魅力も、すぐに身につくものではありません。
時間をかけて丁寧に磨いていくものです。
今は多くの暑さ対策グッズが手軽に手に入ります。
そうした工夫を上手に取り入れながら、心と体の健康を保ち、
充実した教育活動を続けていきましょう。
引用文献
ポール ハーシィ、 デューイ・E. ジョンソン、ケネス・H. ブランチャード
『入門から応用へ 行動科学の展開【新版】―人的資源の活用』(2000、生産性出版)
河村茂雄『教師のためのソーシャル・スキル―子どもとの人間関係を深める技術』
(2002、誠信書房)
【プロフィール】
2015年から現職
専門領域は「教育学」「教育カウンセリング心理学」
研究テーマは教育困難校での支援