前回までに、6つの教師の勢力資源が
「教師の人間的魅力」と「教師役割の魅力」に統合されることについて説明しました。
近年、高校進学率は98%を超えており、多様な生徒が高校に入学しています。
高校は入学試験の成績によっていくつかのタイプに分かれます。
今回は、「進学校」と「教育困難高校」における教師の勢力資源について考えます。
進学校では、成績の高い生徒が多く、大学進学を目的とした学習支援が求められます。
生徒は、難しい内容を分かりやすく、おもしろくゆかいに教えてくれる教師に対し、
「教師役割の魅力」を感じ、信頼感をもちます。
さらに、教師が自身の経験や人生観を率直に語ることで、
「教師の人間的魅力」も生徒に伝わり、信頼関係が一層深まります。
このように、「教師役割の魅力」と「教師の人間的魅力」の両方が重要なのです。
一方、教育困難高校(課題集中高校)では、
多くの生徒が小中学校で十分な学力を身につけられず、
友人関係の構築や集団活動が苦手な傾向にあります。
また、一部の生徒は反社会的・非社会的行動をとることもあります。
こうした状況に対し、「罰や強制性」での指導では望ましい結果を得ることは難しく、
「教師の人間的魅力」を強く感じさせる対応が必要です。
まずは生徒を一人の人間として尊重し、その存在を認めることから始めます。
そして、生徒の悩みに寄り添う気持ちがあることを態度として伝えることが大切です。
また、教育困難高校においても「教師役割の魅力」は不可欠です。
生徒は学習に対して苦手意識や劣等感を抱えながらも、
理解したい、楽しく学びたいという気持ちを持っています。
そのため、教師は生徒の学習意欲を引き出すために、
授業内容や進め方を工夫し、配慮することが求められます。
もし高校入学後に「やっぱりできない」「自分はダメだ」「先生も自分を低く評価している」
と感じさせてしまうと、生徒の学習意欲や学校生活への意欲が低下してしまいます。
以上のように、進学校と教育困難高校では生徒の特性が異なりますが、
どちらの場合でも、「教師役割の魅力」と「教師の人間的魅力」の両方を
生徒に強く伝えることが重要です。
そうすることで、生徒は教師の指導や支援を前向きに受け入れるようになり、
最終的には教師と生徒の良好な関係の形成につながるのです。
引用文献
河村茂雄『教師のためのソーシャル・スキル―子どもとの人間関係を深める技術』
(2002、誠信書房)
文部科学省「学校基本調査」(2024)
【プロフィール】
2015年から現職。専門領域は「教育学」「教育カウンセリング心理学」
研究テーマは教育困難校での支援