「交流分析の『人生態度』と教師行動 ―相互尊重の姿勢―」筆者・苅間澤勇人

暑い日が続いています。
私自身、健康維持のために冷感タオルを首に巻いたり、こまめな水分補給を心がけたり、
日差しを避けて風通しのよい場所で過ごすようにしています。
皆さんも、それぞれ工夫して暑さを乗り切っていることと思います。

さて、前回までのコラムでは、効果的な「教師行動」には人間的魅力が必要であり、
それは一朝一夕に身につくものではないため、
日々の研修と経験によって丁寧に磨き続けることが大切だとお伝えしました。
今回からは、私のカウンセリングの基盤となっている「交流分析」の理論をもとに、
教師行動に役立つ考え方をご紹介していきます。

最初のテーマは「人生態度(Life Position)」です。
「人生態度」とは、自分自身や他者に対して、
私たちがどのような基本的な見方や価値観をもっているかを指します。
交流分析の理論では、これらの態度は幼少期の経験や周囲との関わりの中で形成され、
人生観や行動、人間関係に大きな影響を与えるとされています。
人生態度は次の4つのタイプに分類されます。
(1)「自分も他人もOK」
自己肯定と他者肯定の姿勢をもっており、他者と良好な関係を築こうとします。
教師であれば、生徒や保護者、同僚に対して、
率直かつ思いやりのある対応ができるタイプです。
マンガ『ドラえもん』でいえば「しずかちゃん」のようなイメージです。
(2)「自分はNG、他人はOK」
自信がもてず、伝えたいことをうまく言えなかったり、
受け身の態度をとったりする傾向があります。
時に他者への依存も見られます。いじめ、パワハラなどの被害者になりやすいタイプです。
イメージとしては「のび太くん」に近いかもしれません。
(3)「自分はOK、他人はNG」
自己中心的で、他者をコントロールしようとするため、
トラブルや対立を生みやすい傾向があります。
教師であれば、指導性が強く、周囲の意見に耳を傾けないタイプです。
イメージとしては「ジャイアン」に近いです。
(4)「自分も他人もNG」
悲観的で、他者との関わりを避けたり、孤立しやすかったりします。
自他ともに価値を見出せず、絶望的な考えにとらわれがちです。
あえて例えるなら「スネ夫くん」のイメージが近いでしょうか。

人生態度の考え方で大切なのは、
この4つのタイプのいずれかに固定されているわけではないということです。
状況によって、誰でもそれぞれの態度に移行することがあります。
たとえば、うまくいっているときには「自分も他人もOK」と思えたとしても、
ストレスの多い場面では「他人はNG」の感情が出てくることもあるでしょう。
つまり、私たちが社会や学校という人との関わりの場で過ごす以上、
気持ちよく関われるときもあれば、自己嫌悪に陥ったり、攻撃的になったり、
人を冷めた目で見てしまうこともあるのです。
だからこそ、相手との関係の中でどのような立場に立っているかを自覚し、
「どうすればより良い関係が築けるか」を考えることが重要です。
人生態度という視点は、そのヒントを与えてくれます。

ここ数年、コロナ禍によって人との交流が制限される経験をしました。
そのなかで、改めて「相互信頼」や「相互尊重」といった、
人と関わるうえでの基本的な姿勢の重要性が見えてきたのではないでしょうか。
これからの時代、教師にはその基本を体現する「教師行動」が、
よりいっそう求められていると感じます。

暑さに対しても対応が難しいと、つい特別な対策に目が向きがちですが、
実は「基本的なことを丁寧にやる」ことが、最も効果的なのだと思います。
人間関係や教師としてのあり方についても同じです。
基本的な考え方を大切にし、日々の実践に活かしていきましょう。

引用文献
イアン・スチュアート, ヴァン・ジョインズ(2022).
『TA TODAY:最新・交流分析入門 第2版』実務教育出版

【プロフィール】
2015年から現職。専門領域は「教育学」「教育カウンセリング心理学」
研究テーマは教育困難校での支援