「ストロークの活かし方 ―『条件付き』と『無条件』の違いを意識して―」筆者・苅間澤勇人

前回(2025年10月23日掲載)は、
「ストローク」は心の栄養であり、心の成長に欠かせないもの、
そしてストローク交換が大切であるというお話をしました。
今回は、ストロークの種類の中から
「条件付きストローク」と「無条件ストローク」について考えてみたいと思います。

(1)肯定的条件付きストローク
「テストで95点、すごいね」「マラソン大会で入賞して、よく頑張ったね」
などの言葉がこれに当たります。「~ができたから」という条件が付いた賞賛であり、
ストロークを得るためには特定の成果を出す必要があります。
そのため、目的達成への動機づけとしては有効です。
しかし、このストロークには隠れたメッセージも含まれています。
たとえば「95点を取れないと褒められない」「入賞しなければ努力を認めてもらえない」
といった思いを生みかねません。その結果、失敗を恐れるようになったり、
教師や保護者への評価に反発を感じたりすることもあります。
教師や保護者は使い過ぎに注意したいストロークです。

(2)肯定的無条件ストローク
「おはよう」と挨拶する、優しい笑顔で話しかける、生徒の話を最後まで聴く、
「君たちを大事に思っている」と伝える──これらが肯定的無条件ストロークです。
つまり、相手(生徒)の存在そのものを肯定するストロークです。
このストロークは、相手の人格や存在に向けられるため、
「ありのままの自分でいいんだ」と感じさせ、自己肯定感を育み、
生きる意欲を引き出すうえで非常に有効です。
もしかすると、この時代、私たち教師自身にも、
この肯定的無条件ストロークが必要なのかもしれません。
同僚間でも、肯定的無条件ストロークを意識的に交換していきましょう。
相手を無条件に尊重するその姿勢は、誰にとっても心地よく、温かく受け入れられるものです。

(3)否定的条件付きストローク
「挨拶ができないとダメじゃないか」「遅刻が多くてダメだよ」
「不注意でミスしたらダメだ」などがこれに当たります。
これは、相手のすべてを否定するのではなく、
特定の言動に限定して不快感を伝えるストロークです。
適切に用いれば、相手の成長を促すことができます。
なぜなら、「不適切な言動を改めればそれで良い」
という前向きなメッセージを伴っているからです。
したがって、生徒の行動を正したいときに教師が意識的に使いたいストロークです。
一方で、次に挙げる「否定的無条件ストローク」は、できる限り避けたいものです。

(4)否定的無条件ストローク
「君は本当にダメな人だな」「君には絶対に無理」「君はいつも失敗するね」
──これらは、相手の言動ではなく、存在そのものを否定するストロークです。
このようなストロークを繰り返し受けると、自分の存在意義を見いだせなくなったり、
自己否定感が強まったりします。
それが続くと、うつや無気力などの心身の不調につながることがあります。
また、相手の尊厳を傷つけ、強い不快感を与える点では、ハラスメントと共通しています。

まとめです。
ストロークを上手に使い分けることで、相手(生徒)の成長を促進できるのです。

秋本番、私の住む会津地方では、「身知らず柿」や「会津米」など、美味しいものが豊富です。
数年ぶりに大ぶりのサンマを味わう機会も増え、まさに収穫の秋を感じています。
自然の恵みからしっかり元気をいただきながら、
日々の教育活動を豊かにしていきたいと思います。

引用文献
イアン・スチュアート, ヴァン・ジョインズ(2022).
TA TODAY:最新・交流分析入門 第2版 実務教育出版

【プロフィール】
会津大学文化研究センター 教授 兼 学生部長
2015年から現職。専門領域は「教育学」「教育カウンセリング心理学」
研究テーマは教育困難校での支援