(※編注:こちらのコラムは4月中旬に執筆いただきました)
4月中旬、生徒たちは出会いの緊張感から
少しずつ解放されている時期かと思います。
この時期、学級の中では徐々に「集団規範」が形成され始めます。
その際に大切なのは、その規範が生徒たち自身が目指す、
「理想の学級像」に近づくものであることです。
そのためには、教師の教示的なリーダーシップが、
ゴールデンウィーク(GW)頃までしっかりと必要です。
やがて、GWを過ぎると、学級内では自然と小グループが形成されていきます。
このタイミングからは、リーダーシップの形を
説得的なリーダーシップに移行していくことが求められます。
すなわち、「目標達成のための指導」と「集団維持のための支援」の両方を
バランスよく発揮することです。
では、そのときに、教師が生徒に対してもってほしい「勢力資源」は何でしょうか。
私が特に重要だと考えるのは、「熟練性」、「明朗性」、「準拠性」です。
例えば、学習や部活動などの目標を定めて成果を得ようとする際には、
生徒は教師の教科指導力や部活動指導などの「熟練性」を勢力として認めるでしょう。
また、学級に明るい雰囲気をつくり、生徒同士をつなげ、
安心できる学級を築くなどの「明朗性」を勢力として認めるでしょう。
さらに生徒が「先生ならどう考えるだろう」と自然に手本とするような、
判断や行動のあり方などの「準拠性」を勢力として認めるでしょう。
とくに「準拠性」は大きな影響力を持ちます。それを得るためには、
日ごろから生徒や同僚にとって参考となる考え方や振る舞いを示すことが不可欠です。
なお、「熟練性」や「準拠性」は、一朝一夕で身につくものではありません。
しかし、いったん認められると、長期的に安定した信頼へとつながるのが特長です。
だからこそ、教師としても一人の人間としても、魅力を高め続ける努力が大切だと感じます。
リーダーシップの移行をスムーズに行うためにも、勢力資源を意識することが有効です。
そして、その根底にあるのは「生徒たちを愛でる気持ち」なのだと思います。
引用文献
ポール ハーシィ、デューイ・E. ジョンソン、ケネス・H. ブランチャード
『入門から応用へ 行動科学の展開【新版】―人的資源の活用』(2000、生産性出版)
河村茂雄
『教師のためのソーシャル・スキル-子どもとの人間関係を深める技術』(2002、誠信書房)
【プロフィール】
2015年から現職。専門領域は「教育学」「教育カウンセリング心理学」
研究テーマは教育困難校での支援