※編注:本コラムは10月中旬に執筆いただきました。
10月を迎え、大学関係者にとっては、
特別入試で貴重な土日を奪われるシーズンになった。
勤務先の大学でも、今から11月にかけて、
総合型選抜(自己推薦、グローバル)、指定校推薦、スポーツ推薦、
社会人入試、留学生入試、付属校推薦などが目白押しで控えている。
これらの入試は、今では受験業界やメディアなどで「年内入試」と呼ばれることが多い。
確かに、時期的には年内に行われる入試である。
そして、受験生や保護者の意識としても、
年をまたがずに合格を決められるという点を重視している節はある。
しかし、元々この時期の入試は、学力試験を中心とする年明けの一般入試とは違って、
高校での学業成績や活動の実績、志望動機、小論文や面接などによる
多面的で総合的な評価による選抜が行われるという意味で「特別入試」と呼ばれてきた。
その意味では、時期の問題ではなく、
一般入試か特別入試かという違いには大きな意味がある。
ところが、昨年度、東京の有力私大が、
学力試験で事実上の合否が決まる特別入試を実施しようとしたところ、
文部科学省の不評を買うという「事件」が起きた。
実は、関西圏の私大ではずいぶん前からこうした「特別入試」が存在していたのだが、
慌てた文科省は今年度より、特別入試においては、
原則として面接の実施を必須とするという通知を出してきた。
年内に実施される特別入試なのだから、
年明けの一般入試を単純に前倒しするような入試は困るというタテマエは、よくわかる。
特別入試は多面的・総合的な評価を原則とする考え方にも、
異論を唱える者はいないだろう。
ただし、タテマエを承認することと、タテマエどおりに動けることは同じではない。
少子化の進行の中では、年内に実施される特別入試を通じて、
できるだけ多くの入学者を確保しておきたいという大学側の意向がある。
そして、そうした特別入試の方法を工夫し、多面的・総合的な合否判定を実施したくても、
何より圧倒的に人手が足りないという事情がある。
「アドミッション・オフィサー」という
入学者選抜を専らの仕事とする専門職が存在する米国の有名大学ならともかく、
研究も授業も学生指導も学内業務もすべてを教員が行っているのが、
日本の大学の実態である。
「原則として面接を」と紙一枚で言われても、
どうにも虚しいと思えてしまうのは、ひがみ根性でしかないのだろうか。
【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。
