テレビを見ていると、科学番組などで
「科学や数学が分かり易く説明される」ことがあります。
でも、本当は超ひも理論やポアンカレ予想などはとても難解なので、
どんなに分かりやすく説明されても、一般の人が簡単に理解できるものではありません。
それにもかかわらず「光は粒子と波の両方の性質を持っており、ひも状の形をしている」
などと安易な説明をされると、それだけで分かった気になってしまうものです。
本来、科学者というのは『何を知らないか』を知っている人であり、
エンジニアは『何ができないか』を知っている人でなければなりません。
しかし、学生時代から「分かりやすい説明」に慣らされ、
はじめに答ありきの解法を覚える勉強にハマった人は、
疑問を持つ前に「答を持つ」ようになってしまいます。
STAP細胞を例に挙げるまでもなく、そういう人たちは安直に
「自分の考えた答に合わせた説明」の体系を作ってしまいがちです。
そういう似非科学者に対して、iPS細胞の山中伸弥先生は、
「何かをずっと専門的に勉強していると、
そして全部分かったような気になってしまったら、多分それ以上の発展はできない。
実はまだ分かっていない、何か見逃していることがいっぱいあるんだと、
研究者として謙虚でいたい。自戒を込めて未知を大切にしたい」と言っておられます。
それにもかかわらず、受験対策のために、すぐに結論を知りたがる最近の生徒たち。
答を教えてもらわないと安心できない生徒たち。
答を教えてもらうことが勉強だと思っている生徒たち。
でも、勉強は「分かりやすければそれでいい」というものではないんです。
それで「分かったつもり」になっていてはダメなんです。
本当は「考えるキッカケ」となってほしい、
そこから先を考える習慣を身につけてほしいのです。
そこで、教える側の者として大切なもの。
それは「分かりやすく説明することの問題点」を自覚した上で、
本来はどの部分が複雑で難しいのかを示唆し、
その上に立って「より興味・関心をもたせる」、そんな授業です。
なぜなら、それが未知のものに臨む「将来の科学者の育成」に
つながるに違いないのですから。
【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam5/
