「心の曇りを払う ─ディスカウントと教師の気づき─」筆者・法苅間澤勇人

前回(2025年12月20日掲載)は、
交流分析における「ディスカウント」を取り上げ、
これが“無意識の思い込みの癖”であり、
生徒理解や関係づくりを妨げることがあるとお伝えしました。
今回は、そのディスカウントがどのような形で起こるのか、
4つのタイプに分けて説明します。

(1)問題の「存在」を見落とす
最初のタイプは、問題そのものが見えていない状態です。
たとえば、クラスの雰囲気が荒れているのに
「そのうち落ち着くだろう」と様子を見続けたり、
生徒が困っているサインを出しているのに気づかないままでいたりする場合です。

(2)問題の「重要性」を軽く扱う
問題の存在には気づいていても、その重みを十分に受け取らず
「大したことではない」としてしまう状態です。
生徒同士の言い合いを「じゃれ合い」と誤って捉えたり、
登校渋りを「気まぐれ」と片づけてしまうことがこれに当たります。

(3)「問題の解決の可能性」を否定する
問題の重要性は理解していても、「どうせ変わらない」と思い込んでしまうと、
対応しようとする意欲が生まれません。
声をかけても反応がない生徒に対し「何をしても意味がない」と決めつけたり、
保護者から協力が得られない場面で、「家庭の問題だから学校では無理だ」
と思い込んだりするケースが典型です。

(4)自分や相手の「能力」を軽視する
最後は、(1)問題の存在や(2)重要性、(3)解決可能性を認めつつも、
自分や相手に問題解決の能力を見いだせないタイプです。
「私は毅然と指導できない」「〇〇先生は優しいから厳しく言えない」
といった思い込みがこれに含まれます。一見、慎重な判断のように見えますが、
多くの場合、事実ではなく過去の経験がつくった“古い枠組み”に
縛られている点に気づきにくいのが特徴です。

ディスカウントを減らすには、
「私は何を見落としているのか」「本当に不可能なのか」と、
自分の認識をていねいに問い直すことが役立ちます。
そのためには、日常の出来事を少し引いた視点で振り返り、
ネガティブな決めつけのパターンに気づく習慣が大切です。
「もう一度評価し直す」という姿勢を教師が持つことで、
指導や関係づくりが驚くほど柔らかくなります。
ディスカウントとは、突き詰めれば、
教師自身や相手(生徒)の“生きる力”を小さく見積もってしまうことです。
忙しい学校現場では視野が狭くなりがちですが、
ふと立ち止まって「見えていないものはないか」と問いかけるだけで、
生徒の変化の芽にも、教師自身の成長にも光が当たり始めます。

澄んだ冬空に星が冴えわたるように、私たちもまた心の曇りをそっと払って、
生徒と向き合う力を磨いていきたいものです。

引用文献
イアン・スチュアート, ヴァン・ジョインズ(2022).
TA TODAY:最新・交流分析入門 第2版 実務教育出版

【プロフィール】
会津大学文化研究センター 教授 兼 学生部長
2015年から現職。専門領域は「教育学」「教育カウンセリング心理学」
研究テーマは教育困難校での支援