これまで5回にわたり、アメリカの政府と大学の関係を見てきた。
現在のトランプ第2次政権は、大学のDEI(Diversity, Equity and Inclusion, 多様性、公平、包摂)や
アファーマティブ・アクションに対する執拗な攻撃を繰り返している。
アファーマティブ・アクションは、積極的差別是正措置と訳されるように、
差別のない社会を実現するため、人種、民族、ジェンダー、階級、障害など
さまざまな属性によって不利な立場にある人びとを支援する積極的な措置である。
そのような措置が必要な理由は、
これらの属性は個人には変えることは不可能か著しく困難で、
それを理由に差別することは公正ではないと考えられるからである。
具体的な施策は、大学に関して言えば、
入学者選抜における数値目標の設定、クォータ制(割当制、優先枠)などや、
学業成績、統一テストの成績の優遇措置(いわゆる下駄を履かせる)などの措置である。
こうした措置に対するトランプ政権の攻撃を理解するためには、
アメリカの人種差別とその是正の歴史をみる必要がある。
アメリカの根強い人種差別は、何よりアメリカの社会構造そのものの、
それも不可視なメカニズムである。それに対して、
大学がどのように是正措置としてのアファーマティブ・アクションを展開していったか、
それに対する批判とアファーマティブ・アクションの変化について、
次回以降順次説明していきたい。
【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。
