総合学科において活用される諸制度の第4回目は、
「専門学科への転学の配慮」である。本テーマの趣旨は、
「専門教科・科目の履修を通して特定の分野への関心が高まり、
専門的に該当分野を深く学び、
卒業後はその分野への就職・進学を志望するようになった生徒に対応するため、
専門学科への転学が可能にするよう特段の配慮を行うこと」である。
はじめに、転学とは、在籍している学校を退学せずに、新しい学校に籍を移すことで、
学年は前の学校(前籍校)で取得した単位数で判断する。
各学期が始まる前に、例えば1年次の夏季休暇中、
転学の試験に合格した生徒が、希望する学校へ転校する制度である。
専門学科は主として学年制であるため1年生、
総合学科は単位制・無学年制であるため1年次生と称して説明する。
現在も総合学科は、専門学科(農業・工業・商業など)が母体となり、
複数の学科・学校が発展的統合(統廃合)として総合学科に生まれ変わっている。
中途退学者を減らすために誕生した総合学科は、
1年次に自己の適性や未来の社会・経済動向、
卒業後の進路を考える「産業社会と人間」を学んだ後に、
進路に合った専門科目を2年次から学習する。
そのため、専門科目担当の教師からは、しっかりと専門科目を教えられない。
当時は、専門科目の担当者からの専門高校がなくなる、といった不安・不平・不満を
少しでも解消するための政策が「専門学科への転学の配慮」と、私は受け止めた。
その理由は、「専門学科への転学の配慮」は、かなりハードルが高いのである。
専門学科・商業科の場合、1年生で簿記3級、2年生簿記2級、3年生で簿記1級を
目標にしながら簿記学習を深める。
総合学科は2年次から簿記3級、3年次簿記2級となる。
これでは、転学は無理と判断した。しかしながら、総合学科の生徒が、
専門科目を極めたいと転学をするのならば、2年次の1学期が適切な時期であろう。
今日、本テーマを推進するには、対面授業にこだわらず、
夏季休暇期間中に、1学期の範囲をビデオ学習か、
ビデオ学習に教師の補講を加えたハイブリッド学習で終了する。
私の経験では、学力の高い生徒は、簿記などの一科目は2週間ほどで前期の範囲を終える。
また、単位の読み替え、学年をまたいで履修させるなど、
思い切った「教育課程の弾力化」を、校長が教育委員会と連携して断行するかである。
【プロフィール】
日本大学商学部准教授
1985年より東京都立高校に勤務
北地区チャレンジスクール(現・桐ヶ丘高等学校)開設準備室 教諭、
北地区総合学科高等学校(現・王子総合高等学校)開設準備室 主幹教諭、
晴海総合高等学校 校長 等を経て、2023年より現職
