「総合学科高校の変遷から今後の展望を考察する 12」筆者・日本大学商学部 准教授 玉川弘文

総合学科において活用される諸制度の第4回目は、
「専門学科への転学の配慮」である。本テーマの趣旨は、
「専門教科・科目の履修を通して特定の分野への関心が高まり、
専門的に該当分野を深く学び、
卒業後はその分野への就職・進学を志望するようになった生徒に対応するため、
専門学科への転学が可能にするよう特段の配慮を行うこと」である。

はじめに、転学とは、在籍している学校を退学せずに、新しい学校に籍を移すことで、
学年は前の学校(前籍校)で取得した単位数で判断する。
各学期が始まる前に、例えば1年次の夏季休暇中、
転学の試験に合格した生徒が、希望する学校へ転校する制度である。
専門学科は主として学年制であるため1年生、
総合学科は単位制・無学年制であるため1年次生と称して説明する。

現在も総合学科は、専門学科(農業・工業・商業など)が母体となり、
複数の学科・学校が発展的統合(統廃合)として総合学科に生まれ変わっている。
中途退学者を減らすために誕生した総合学科は、
1年次に自己の適性や未来の社会・経済動向、
卒業後の進路を考える「産業社会と人間」を学んだ後に、
進路に合った専門科目を2年次から学習する。
そのため、専門科目担当の教師からは、しっかりと専門科目を教えられない。
当時は、専門科目の担当者からの専門高校がなくなる、といった不安・不平・不満を
少しでも解消するための政策が「専門学科への転学の配慮」と、私は受け止めた。

その理由は、「専門学科への転学の配慮」は、かなりハードルが高いのである。
専門学科・商業科の場合、1年生で簿記3級、2年生簿記2級、3年生で簿記1級を
目標にしながら簿記学習を深める。
総合学科は2年次から簿記3級、3年次簿記2級となる。
これでは、転学は無理と判断した。しかしながら、総合学科の生徒が、
専門科目を極めたいと転学をするのならば、2年次の1学期が適切な時期であろう。
今日、本テーマを推進するには、対面授業にこだわらず、
夏季休暇期間中に、1学期の範囲をビデオ学習か、
ビデオ学習に教師の補講を加えたハイブリッド学習で終了する。
私の経験では、学力の高い生徒は、簿記などの一科目は2週間ほどで前期の範囲を終える。
また、単位の読み替え、学年をまたいで履修させるなど、
思い切った「教育課程の弾力化」を、校長が教育委員会と連携して断行するかである。

【プロフィール】
日本大学商学部准教授
1985年より東京都立高校に勤務
北地区チャレンジスクール(現・桐ヶ丘高等学校)開設準備室 教諭、
北地区総合学科高等学校(現・王子総合高等学校)開設準備室 主幹教諭、
晴海総合高等学校 校長 等を経て、2023年より現職