総合学科において活用される諸制度の第2回目は、「学校間連携の推進」である。
第4次答申では、「総合学科においては、可能な限り多様な教科・科目を開設する
必要があるため、他の高等学校と連携する方策を積極的に活用するものとする。
その場合、他校において、当該教科・科目の授業を特定の学期又は期間に
実施してもらう等の協力を得るなど、必要な措置を講じる」とある。
多くの総合学科は、商業や工業、農業など専門高校が
発展的統合(統廃合)で生まれ変わった学校である。
当然、専門高校のように、専門を深く学ぶ科目を設置することは難しい。
例えば、商業高校は1年生:簿記、2年生:財務会計I、3年生:財務会計IIと学習するが、
総合学科は専門科目を2年次生から学ぶため、
2年次生で簿記、3年次生で財務会計Iとなる。
学校によっては、教員配置が限られているため、財務会計Iは設置できない。
そういうことも含めて答申の中に「学校間連携の推進」が謳われていると解釈したい。
しかしながら次のような課題がある。
1 総合学科と専門学科との連携
総合学科の科目単位は、2時間連続2単位または2時間連続を週2回行う4単位である。
しかし、専門学科は連続の時間での授業を行わない。
2 夏季休業中での集中講座における授業担当者や実務担当者の実態
授業担当者の部活動や補習・補講、休暇や1学期の土日出勤の振り替えを
夏季休暇に取得する。
そのため就業規則などの服務との兼ね合いで学校間の調整がつかず、
生徒の希望する科目の開講は、皆無に等しかった。当時は対面授業であり、
現在はオンライン授業が可能であるが、現状は変わっていないであろう。
また、工業系や農業系の実習はオンライン授業に馴染まない。
また、私も経験した実務担当者は、相手校と設置する科目・単位証明の
しかたなどの確認を毎年行う。相手校の学校間連携に関するさまざまな規定も確認するため、
負担がおのずと増える。
可能な範囲で複数の高等学校の教育課程を同一にし、集中講義以外の学期中に行う。
これが以上のような課題を踏まえた「学校間連携」の現実的なあり方ではなかろうか。
少子化により課題になる中山間地域や離島等の高等学校は、
「学校間連携」を真剣に検討する。
生徒の多様な進路実現に向けた教育・支援を可能とする高等学校教育を実現し、
持続的な地方創生の目玉として「学校間連携」を考えるべきだったと痛感している。
【プロフィール】
日本大学商学部准教授
1985年より東京都立高校に勤務
北地区チャレンジスクール(現・桐ヶ丘高等学校)開設準備室 教諭、
北地区総合学科高等学校(現・王子総合高等学校)開設準備室 主幹教諭、
晴海総合高等学校 校長 等を経て、2023年より現職