今回から5回シリーズで、総合学科において活用される諸制度を説明する。
第1回目は、「単位制による教育課程の編成」である。
文部科学省は、総合学科の設置にあたり、平成元年度前後の
高等学校で増え続けていた不本意入学者や中途退学者への対応策として、
教育課程の編成に単位制を積極的に活用する必要があると示した。
単位制の魅力は、卒業認定に当たり、
生徒が過去に在籍した高等学校において修得した単位も累積して行うことである。
卒業までに修得させる単位数が74単位で4単位不足した場合、
次年度4単位を修得すれば、半期(9月)で卒業できる。
留年生・原級留置生を解消する良い制度であり、
生徒・保護者が心に傷を負わずに卒業できるはずだ。
しかしながら、以下のような問題が発生した。
(1)例えば1年次に修得できなかった単位があったとする。
学校によっては、学年制に近い教育課程のため、2年次では履修できない。
すると、3年次の空きコマで1年次クラスに入って受講することになる。
あるいは、時間割によっては履修できないこともあるため、
転学や退学をする生徒がいる。これでは、学年制と変わらない。
(2)必履修科目が未修得の場合、
・教員が安易に転学を勧める。
今、注目されている通信制は、簡単に転学できるからだ。
・生徒の中には、「下級生と同じ教室での授業がいやだ」という者もいるので、
やはり退学・転学を勧める。丁寧な説明と寄り添った指導が必要である。
(3)単位未修得者のために授業時数を増やすことは、教育予算増の一因となる。
一方で、単位制に利点が多いこともまた事実である。
少子化による高校入学者の減少に伴い、高校の統合や新設、
学科・課程の募集停止による廃止・新設が起きている。
単位制の生徒は、学習したい科目を設置している学校への通学や
ICTでの履修が可能である。
授業料が1単位当たりでの支払いであるから保護者負担が少なくて済む。
とりわけ専門学科での実習は、
実習用の教具・機器・備品等がある特別教室での授業が特色であり、
生徒の進路をみすえた学習を保障する。
今日では、地方ほど人口減少による高校入学生の減少などの課題に対応しながら、
「生涯学習社会への移行」という社会的背景を意識すべきである。
そのような“学習歴社会”の創出のために、単位制による学びは有効である。
また、もう一度学びなおしたい生徒・社会人に対して、
これからの社会が求めている知識・技能を身に付けさせ、
リスキリングとリカレント教育に対応するために、単位制による学びを推進すべきである。
生徒および保護者等に単位制の歴史的背景、意味、特色等を丁寧に説明し、
広く地域住民に説明することが総合学科高校の発展、地域の活性化につながり、
ウェルビーイングとなるのではないか!
【プロフィール】
日本大学商学部准教授
1985年より東京都立高校に勤務
北地区チャレンジスクール(現・桐ヶ丘高等学校)開設準備室 教諭、
北地区総合学科高等学校(現・王子総合高等学校)開設準備室 主幹教諭、
晴海総合高等学校 校長 等を経て、2023年より現職