「5月の壁」筆者・青木勝美

(※本コラムは5月末に執筆いただきました)

今年の5月は、3日(土)・4日(日)・5日(月)と土日が含まれ、
ちょっと損をしたような気がするが、6日の火曜日はおまけの振替休日で4連休となった。
昔々は、3連休は珍しく、貴重なものであったのだが、
今は、4連休、5連休は当たり前、昭和の日から有給休暇を活用すれば、
10数連休も可能な時代になってきた。
まさにゴールデンウィーク(GW)、大型連休である。
“働き方改革”により休暇が取りやすくなった職場は、羨ましい限りである。
各企業の努力により、仕事の効率化・自動化が進み、
労働環境は、より改善されていると推察される。

さて、5月は新入社員の研修も一段落し、連休で一息ついて、
本格的な仕事に向かう再スタートの時期となる。しかし、この時期、
新入社員も含めて退職する若者が増加しているとの報道があった。
さらに、退職の意思表示や手続きを代行してもらう、
「退職代行サービス」(昨年も書いた)の利用者が急増しているとのこと。
特に、連休明けから新入社員からの依頼が、昨年の2倍以上となり、
多忙を極めているサービス会社もあるとのことであった。
首都圏1都3県でひとり暮らしをする20~30代の会社員の男女400人に対する調査
(不動産会社「FJネクストホールディングス」)があった。
「もしあなたが退職するとしたら、退職代行サービスを活用しますか」という質問に、
「積極的に活用したい」との回答が6.8%。「どちらかといえば活用したい」が21.8%。
約3割の若者がこのサービスの活用に前向きであった。
今後若者の間では、退職代行サービスは、一般的な退職行動の手段となるのではないだろうか。

また、「長期目線でゆるゆる続ける“ゆる転職活動”~」との記事(AERA)があった。
新卒入社時から転職サイトに登録する新社会人が急増しているらしい。
ただし、「転職サイトに登録しても、すぐ求人に応募する新入社員はそう多くない。
就職した会社の勤務に励みながら、今よりも良い条件の求人があれば、
ときどき応募し面接も受けるが、複数社の内定を獲得したからといって
必ずしも転職するとは限らない。待遇や職場環境を冷静に比較し、
長期目線でゆるゆると転職活動を続ける」のだ。
スマホやPCを使えば簡単に転職サイトへの登録は可能であるが、
入社早々から、自分自身が決めた就職先なのに、なぜ……。疑問符が消えない。
自身の心の逃げ道なのか、安全保障のために失業を経由しない転職
(ジョブ・ツー・ジョブ・トランジション)を確実にするためなのか……?
米国や英国の転職経験者の割合は9割を超え、隣の韓国は7割の半ばを超えている。
日本の場合は6割程度と終身雇用制度がまだまだ生きているようである。
しかし、総務省2023年度の調査によると
「就業者のうち転職者は325万人と1年前に比べて12万人増加(6期連続)。
また、転職等希望者は1035万人と78万人増加(10年連続、過去最多)」
と年々増加傾向にある。

入社後、さまざまなスキルを身に着け、より有利な転職先が決まれば、
退職代行サービスに依頼し、次の企業に向かう。
若者の価値観の変化により、退職から転職は特異なことではなく、
キャリア形成の手段となるのではないだろうか。
何れにしろ、5月は見えない“壁”がある。
しかし、若者は意外にしたたかに生きる術を知っている。

【プロフィール】
1983年4月より群馬県公立高校教員として勤務
学科主任、学年主任、保健主事、進路指導主事等歴任
2019年、平成30年度 専門高校就職指導研究協議会全国発表
2022年3月、群馬県公立高校教員完全定年(再雇用含む)
2022年4月よりライセンスアカデミー東日本教育事業部顧問として、
おもに就職関係の進路講演、面接指導等を各学校で行う