国立大学の類型化や分化が進む一方で、再編統合の動きもでてきている。
最近では、2020年の名古屋大学と岐阜大学の法人統合による、国立大学法人 東海国立大学機構、
2022年の国立大学法人 北海道国立大学機構がある。
これらは大学の統合ではなく、国立大学法人の統合で、大学自体は独立して継続している。
これに対して、2024年に東京工業大学と東京医科歯科大学が合併した、
東京科学大学は大学の統合であり、当然法人も統合されている。
ちなみに英語名はInstitute of Science Tokyoで、
東京工業大学の英語名Tokyo Institute of Technology に近い。
東京医科歯科大学はTokyo Medical and Dental Universityである。
なお、国立大学については、2001年のいわゆる遠山プラン、
「大学(国立大学)の構造改革の方針 ―活力に富み国際競争力のある国公私立大学づくりの一環として―」
によって2002年から2003年にかけて98校から15校減少している。
これらは主に地方国立大学と医科大学の合併である。
さらに法人化後の2005年と2019年に3校減少している。
これらに先立ち、2019年に山梨大学と山梨県立大学は、
全国で初めて大学等連携推進法人の認定を受けた大学アライアンスやまなしを設立している。
これは、より緩い大学の連携と見ることができる。
なお、この間、私立大学では12校が統合により減少している。
このようにさまざまな形で、文部科学省は、統合再編を推進する政策を継続してきた。
現在答申案が審議されている中教審でも国立大学だけでなく
公私立大学の再編統合を促進する政策をさらに強化している。
18歳人口の減少により昨年ついに私立大学の入学定員充足率は平均98.2%で過去最低、
100%未満の定員未充足校は59.2%で過去最高となった。
このまま推移すれば、2040年にはさらに大学の多くが定員割れを起こし、倒産する懸念がある。
これに対して、連携や再編統合は、大学や法人のソフトランディングを図るものである。
この連携や再編統合がどの程度今後進行するか、予断を許さないが、
他方で大学の分化も着々と進行している。
大学の再編統合と分化は、日本の高等教育の姿を大きく変えていくことになるだろう。
【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。