進路コラム 痛恨の、 筆者:宇佐美 正利

進路コラム

痛恨の、 筆者:宇佐美 正利
宇佐美 正利 2017年5月10日(水)

五月病の季節がやってきた。
 見慣れできた 東京の狭こい夜空
 泣ぎながら歩ぐ ひとり帰りみぢ (朝倉さや『東京』)
新しい生活への緊張感が消えるころ、焼けるような郷愁に襲われる。
 元気でいるか 街には慣れたか こんどいつ帰る 「金頼む」のひと言でもいい
 おふくろに聴かせてやってくれ (さだまさし『案山子』)
残された者の心のなかも同様である。

全国大学生協の調べ(2017年2月発表)によると、
下宿生のアルバイト就労率は71.9%で、収入27,120円/月は
70年以降最も高く、収入に占める割合22.4%も過去最高という。
さらに28.8%が深夜労働では学業どころではあるまい。
5月の連休ばかりか盆暮れの帰省もままならない。

江戸の商家を習い「藪入り」を実践する企業がある。
お盆前後に手土産と片道切符を持たせて新入社員を実家へ帰す。
母校への近況報告が宿題である。
夏の目標があるから5月になんか辞められない。
持たせる切符は帰りの切符だ。
会社から社員へ逆の『帰ってこいよ』コールである。

大学時代に母を泣かせた苦い失敗がある。
近況を知らせよと何度も懇願する母に宛てた一通の手紙である。
電話などない三畳下宿の貧乏暮し。
親に手紙を書くのも照れくさく、戯れで安心させたかったのだ。
しかし必死な母にジョークは劇薬となってしまった。
まっさらな便箋の中央に、たったのふた文字。
「前略」をもじった痛恨の、「全略」。許せ、おふくろ。

著者プロフィール

宇佐美 正利 (うさみ・まさとし)
1956年、群馬県生まれ。早稲田大学卒業。
学生時代、会話の苦手な自分を「人と話さざるを得ない環境に追い込む」ため、2年次に北海道別海町の牧場にとび込み1か月の労働。「人それぞれの居場所の大切さ」を知る。4年次5月〜翌3月にヨーロッパ、アフリカ、アジア18か国に遊学。「縦以外の価値観」を実体験する。
教育産業界に35年。高校内での進路講演を年間70回以上実施。情報提供ばかりでなく「考え方」の提案に努めている。

◇編著書
『才能と仕事のベストマッチング』(大学新聞社) 2011年11月11日

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