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「不登校41万人が問いかけること」筆者・法政大学キャリアデザイン学部 教授 児美川孝一郎

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2024年もまた、不登校の子どもの数が過去最高になった。
メディアでは、小・中学校における不登校の児童・生徒数である34万人という数字が、
報道の見出し等に踊った。しかし、いまや「準義務化」に近い進学率に達している、
高校の不登校生徒を加えない理由はない。
小・中・高校を足せば、不登校の子どもは41万人強になる。
さらに言えば、不登校の定義からは、経済的理由や病気による欠席者は除かれている。
それらを含んだ長期欠席の子どもは、小・中・高校を合わせると、なんと59万8千人弱になるのである。
これだけの数の子どもたちの学習権と、社会的自立に向けた発達をどう保障するのかは、
日本の教育に突きつけられた重たい課題である。

とはいえ、では、問題は教育だけなのかと言えば、そうではなさそうだ。
高校や大学段階を過ぎた年齢層におけるニートやひきこもりは、以前から社会問題として認識されてきた。
また、最近では、中国の若年層における「寝そべり族」(※)や、
米国の若者の中での「静かな退職(Quiet Quitting)」の広がり等が伝えらえるが、
日本でも同様の心性や価値観を抱く若者が少なくないことを明らかにした研究も出てきている。
これらの若者は、まったく働かないわけではない。生活維持のために必要最低限の労働はする。
しかし、それを超えてまで、仕事や職場に積極的にコミットしようとは絶対にしないのである。

このような現象は何を意味しているのか。
大きく振りかぶった議論に聞こえるかもしれないが、要するに、
学校段階においても、卒業後の職業世界においても、20世紀的なシステムには乗らない、
そこでの成長、勤勉、上昇意欲、個性、夢の実現といった規範モデルや価値観には馴染めない、
馴染もうとしない子どもたち・若者たちが、
すでに一定のボリュームで登場しはじめたということではないのか。
そうであれば、これまでのシステムを前提とした小手先の対応では、
事態に対処できないのは当然であろう。こちら側の発想と想像力が根本から問われている。

(※過去コラム参照:「日本版『寝そべり族』?」https://shinronavi.com/news/detail/1926 )

【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。

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