福祉、IT分野の国家試験 受験料値上げ 更新日: 2021年10月24日
高校生のための進路ナビニュース
福祉やITに関連する分野の国家試験受験料が値上げしている。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、試験場の消毒をしたり、密を避けるために会場を余計に確保したりするなど、対策費がかさむためだ。
深刻な人手不足が叫ばれている介護業界。
団塊の世代(1947~49年生まれ)が後期高齢者となる2025年度には、介護従事者を現状よりも約32万人増やす必要があると厚生労働省は試算している。
しかし、介護福祉士の国家試験では、今秋以降の受験料が前年度比20%増(3,080円)の1万8,380円となった。社会福祉士は26%増(3,930円)で1万9,370円、精神保健福祉士は37%増(6,530円)で2万4,140円と、それぞれ値上げされている。
影響はIT分野にも及んでいる。
経済産業省の試算によると、2030年に最大約79万人が不足するとされているIT人材。
情報処理安全確保支援士や12の専門分野からなる情報処理技術者の試験でも、受験料が現行の5,700円から32%(1,800円)値上げされて7,500円となった。
昨年度に実施された介護福祉士の試験では、会場を消毒するための機材の確保や受験者を分散させるための会場確保で運営費がふくらんだ。厚労省は受験料収入ではまかないきれずに赤字が出たとして、今年度はコスト上昇分を受験料に転嫁せざるを得ないとした。
学生や働きながら資格の取得を目指す人にとって数千円の値上げは決して小さくない。
各関連団体は、受験料の値上げが受験者の減少につながり、将来的な人材不足解消が難しくなる恐れがあると警鐘をならす。
公益社団法人・日本介護福祉士養成施設協会では、「年によって受験料が上下するのは公平性を欠く」として、国に業務の効率化や生活困窮者の受験料減免を求める意見書を提出した。兵庫県明石市では、志願者の減少を懸念して、値上げ分を助成することを決めた。
一般社団法人・日本IT団体連盟は、「IT業界の人材不足に伴う育成の必要性は、国力に直結する重要課題。若い技術者や学生が受ける初歩的な試験の受験料を安く設定するなどの対策が求められる」と述べた。
いずれも、人材確保に向けた国の施策に沿わない事態となっており、安定的な運営に向けた対応が求められる。