学校配置をどう適正に進めるかに関する研究は、
「環境(空間)に存在する人間(集団)の視点 (people in place) から
『建築』空間をいかに『計画』・設計するかを論じる
(human-centered design) 学問」(Wikipedia)
である建築計画学の一分野とされている。
総務省通知(2014年4月)では、自治体は公共施設管理計画を策定し、
公共施設の「更新・統廃合・長寿命化」などを計画的に行うことで、
中長期的な財政負担の軽減を図ることが奨励される。
わが国でも、合計特殊出生率の低下は長期的に進行しており、
子どもの学習と生活の場である学校の小規模化に歯止めをかけることに
苦悩する自治体が増加している。
では、人口減少社会における「小国寡民」
(老子の思想で、「小さな国土に少ない人口が存在する社会」を理想とする)
の教育は成り立たないのだろうか。
就学人口の中長期的な減少下では、適正な規模を維持する観点にたつ学校統廃合等で
学校数を減らす手立てしか残されていないのか。
ローマ・クラブが「成長の限界」と題する報告書を公にして
人口爆発に警鐘を鳴らしたのは約50年前であったが、
当時それに呼応した都市政策として「コンパクト・シティ」構想が打ち出された。
タンツィック,G.B.とサアティ,T.L.による「コンパクト・シティ」の公刊である(1973年)。
我が国でも、人口減少が中長期的に継続する過程での国土政策として、
コンパクト・シティ構想が提唱されている(国土交通省)。
コンパクト・シティ実践例としては、青森市や東通村などがあるが、
成功例としては富山市の事例が取り上げられることが多い。
そこで同市の公共施設等総合管理計画を見ると、総務省通知と同様の次のくだりが置かれる。
「公共施設等がこれから大量に更新時期を迎える一方で、
地方公共団体の財政は依然として厳しい状況にあります。
地方公共団体においては、今後、人口減少等により
公共施設等の利用需要が変化していくことも踏まえながら、
早急に公共施設等の全体の状況を把握し、長期的な視点をもって
更新・統廃合・長寿命化などを計画的に行うことにより、
財政負担を軽減・平準化するとともに、
公共施設等の最適な配置を実現することが必要となっています。」
筆者が富山市の公共施設管理計画を知ったのは、
富山駅前近辺の小中学校統廃合調査に際してであった。
後にコンパクト・シティ構想が抱かれていることを知ることになるが、
では、成功例とされる富山市のコンパクト・シティ構想では
学校施設の再編はどう扱われているのだろうか。
なお、上記のタンツィック,G.B.とサアティ,T.L.による「コンパクト・シティ」では、
「未来都市の文化」と題する章で「学校、美術、および工芸」に触れ、
「未来の学校」像として次のように論じている。
「未来の学校では、新しく開発された学習装置がもっと活用されることだろう。
上級クラスに提供される講義の多くは閉回路テレビで行われる。
この閉回路テレビ教育システムが完全に成功するには、しかしながら、
改良された映写機と、その媒体を使うことに今よりも習熟した教師がいる。
コンピューターに連結している遠隔操作卓も広く使われるだろう。
コンパクト・シティの学校システムでは上位のものが統合され中央に位置しており、
24時運営されている。」
このくだりを読むと、今日我が国の教育界を席巻するDXが
学校教育に広がることを想定しているかのようである。
では、コンパクト・シティ富山における学校再編計画はどのように描かれるか。
字数が尽きたので、コンパクト・シティ構想と学校再編計画との関係の詳細は
次回触れることにしよう。
【プロフィール】
教育政策論、教育社会学専攻。
東京学芸大、国立教育政策研究所、文教大学等を経由し、
現在は東京学芸大名誉教授、 国立教育政策研究所名誉所員。
この間、各地の教育委員会の学校づくり等に携わるほか、
教職員対象の各種研修会講師も務める。
