2025年度からスタートする大学無償化制度は、多子世帯の大学進学を支援する新しい仕組みです。3人以上の子どもを扶養する家庭が対象となり、所得制限を設けず学費の負担を軽減します。今回は、進学の選択肢を広げるこの制度を詳しく解説します。
多子世帯向けの大学無償化制度とは?
2025年度から、新たに導入される大学無償化制度では、子どもを3人以上扶養する家庭に対して、大学進学にかかる費用負担を軽減する支援が行われます。この制度の特徴は、世帯年収による制限がなく、条件を満たす家庭であれば支援を受けられることです。大学や短期大学、高等専門学校、専門学校などの学費を対象の無償化制度となるため、金銭面における進学のハードルが下がるといえるでしょう。
対象となる条件
多子世帯向け大学無償化制度には、以下の利用条件があります。
- 扶養される子どもが3人以上いること
扶養の基準には年齢の制限はありません。例えば、大学生、専門学生、または高校生など、家族が税制上の扶養親族としてカウントされている場合に支援対象となります。 - 扶養条件が崩れた場合の注意点
扶養されている子どものうち1人が卒業や就職などで扶養から外れると、残る兄弟も支援対象外となる可能性があります。例えば、3人きょうだいで第1子が扶養から外れた場合、第2子や第3子も支援を受けられなくなる点に注意が必要です。
大学無償化の対象となる教育機関
大学無償化制度は、対象となる教育機関が定められています。
対象となる教育機関
以下の機関に進学する場合、無償化の対象となります。
- 大学と短期大学
国公立、私立問わず、昼間制および夜間制の課程が対象となります。昼間課程はもちろん、仕事や家庭の事情で夜間課程を選ぶ学生も支援の対象です。通学形態に応じて授業料支援の上限金額が異なります。 - 高等専門学校(4~5年生が対象)
4年生および5年生に在籍している場合が対象となります。高等専門学校は専門的な技術を学ぶ教育機関であり、特に実践的な学びを目指す学生に向いています。 - 専門学校
専門学校の中でも、確認済みの学科が対象です。分野によって対象外となる場合もあるため、進学予定の学校が無償化対象校に含まれるか事前の確認が重要です。
注意が必要な点
制度を利用するためには、進学先が文部科学省認定の対象校であることが条件です。文部科学省の公開リストや学校案内で確認することができます。また、対象校でも一部の課程や学科が除外される場合があるため、個別の条件を確認することが求められます。
進学予定の学校が無償化の対象かどうかを調べておくと、手続きのスムーズな進行に役立ちます。この制度を活用することで、家族の教育費負担を減らし、進学への可能性を広げることが期待されています。
参考:「支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧」(文部科学省)
(https://www.mext.go.jp/kyufu/support_tg.htm)
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大学無償化の支援内容
多子世帯向け大学無償化制度では、大学進学にかかる経済的負担を軽減するため、入学金や授業料の支援が行われます。所得制限は設けられていませんが、支援には上限が設定されています。
支援の内容と上限額
支援対象の学校種別ごとに、以下の上限金額が設定されています。これは昼間課程に通う場合の金額を基準としています。
学校種 | 入学金 | 授業料 |
---|---|---|
国公立大学 | 28万円 | 54万円 |
私立大学 | 26万円 | 70万円 |
国公立短期大学 | 17万円 | 39万円 |
私立短期大学 | 25万円 | 62万円 |
高等専門学校 | 8万円 | 23万円 |
専門学校 | 7万円 | 17万円 |
夜間課程や通信課程の場合、支援金額は昼間課程の半額程度、または別途設定された金額となります。対象となる学校や課程の詳細は事前に確認することが推奨されます。
現行制度からの拡充内容
現在の制度では世帯年収に応じた支援(全額支援、2/3支援、1/3支援)が提供されていますが、2025年度からの無償化制度では、以下の拡充が行われます。
- 多子世帯向け支援
子どもを3人以上扶養している家庭では、所得制限を設けず、全額支援の対象となります。 - 中間層への支援
世帯年収が約600万円程度の家庭についても、1/4支援が適用されます。この対象には多子世帯や私立大学の理工農学部進学者が含まれます。
支援の仕組み
この制度では、授業料や入学金の支援金額が学生本人に直接支払われるのではなく、進学先の学校へ納付されます。そのため、学生や保護者が制度を利用する際は、学校窓口での手続きが必要です。
参照:「令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ」(文部科学省)
(https://www.mext.go.jp/content/20240426-mxt_gakushi_100001505_2.pdf)
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無償化制度の申請手続きとスケジュール
大学無償化制度を利用するためには、事前の申請手続きが必要です。申請方法は進学前に行う「予約採用」と、進学後に行う「在学採用」の2つに分かれています。それぞれの手続き方法やスケジュールについて以下の表にまとめました。
種類 | 対象者 | 主な手続きの流れ | 注意点 |
---|---|---|---|
予約採用 | 高校3年生、高校卒業後2年以内 | 1. 高校3年生の4月下旬頃に、学校から申請書類を受け取る。 2. 必要書類を準備し、日本学生支援機構(JASSO)へ申し込む。 3. 秋頃に「採用候補者決定通知」が学校経由で届く。 4. 進学が決定したら、大学で通知書を提出し、制度利用を申請。 | 採用候補者認定後も、進学時に正式な手続きが必要。 申請期間を過ぎると受付不可となるため早めの準備が重要。 |
在学採用 | 進学後の在学生 | 1. 進学先の大学の窓口で申請書類を受け取る。 2. 日本学生支援機構(JASSO)のオンライン申請システムで手続き。 3. 書類審査後、数ヶ月以内に結果通知が届く。 4. 支援が決定すると授業料減免や奨学金支給が開始。 | 春(4月頃)または秋(9月頃)に申請可能。 春申請の場合は4月分を遡って受けられる。 早めに大学窓口で確認すること。 |
申請スケジュールのポイント
予約採用の場合、申請は高校在学中に行う必要があります。4月下旬頃から手続きが始まるため、必要書類の準備を早めに行うことが重要です。在学採用では、進学後の春または秋に申請可能で、春に申請する場合は4月分から支援を受けることができます。特に進学時期に合わせた早めの準備が、スムーズな手続きにつながります。
制度利用時の注意点
進学先が無償化制度の対象校か確認することが必要です。申請手続きでは、本人および保護者のマイナンバーや必要な証明書類の提出が求められるため、これらを事前に準備しておくと手続きがスムーズに進みます。また、進学後に家庭の収入状況が変化した場合でも、追加の申請を行うことで制度を利用することが可能です。早めに情報を収集し、正確な手続きを進めることが重要です。
無償化制度を活用する際の注意点
大学無償化制度を利用するには、支援条件を維持することが重要です。制度に関する注意点を再度確認しましょう。
1. 扶養条件の継続
この制度は、3人以上の子どもを同時に扶養している家庭が対象です。扶養している子どもの人数が減った場合、残りの兄弟も支援対象外になる可能性があります。例えば、第1子が就職や卒業で扶養から外れると、他の兄弟が在学中であっても支援が終了することがあります。扶養人数の変動が予想される場合には、早めに対応策を検討することが必要です。
扶養状況は、市町村の住民税情報を基に確認されます。たとえ家庭に3人以上の子どもがいても、1人でも扶養から外れれば支援の資格を失う場合があります。このため、家族全体の進学計画や就労状況を含めた管理が求められます。
2. 学業条件
進学後に一定の学業要件を満たすことも支援継続の条件です。出席率や成績、学習意欲が評価の対象となり、基準を下回ると支援が中断される場合があります。
出席率が8割未満になると警告を受け、6割を下回った場合は支援が打ち切られる可能性があります。さらに、成績評価(GPA)が所属学部の下位25%に該当した場合や、必要単位数を取得できなかった場合も支援が停止される場合があります。進学計画に基づいた学習意欲を維持し、授業に積極的に参加することが求められます。
学業要件を満たせなくなりそうな場合には、早めに学校窓口に相談することで、改善策を見つけやすくなります。成績や出席状況に問題があると感じた際は、積極的に行動することが支援を継続する鍵となります。
制度を利用する際の心構え
支援を中断されないためには、扶養条件や学業要件を定期的に確認し、進学計画を見直すことが必要です。また、進学先が無償化制度の対象校であることを事前に確認しておくと、申請手続きがスムーズに進みます。支援条件をしっかり理解し、制度を計画的に活用することで、子どもの学びを支える環境を整えることができます。
進学の可能性を広げる大学無償化制度を計画的に活用しよう
大学無償化制度は、経済的理由で進学を諦める家庭に新しい可能性を提供します。対象条件や支援内容をしっかりと理解し、扶養や学業要件を維持することで、安定した支援を受けられます。事前の確認や早めの手続きを行い、子どもの学びを支える制度を効果的に活用しましょう。
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