臨床心理士になるには?臨床心理士の仕事について徹底解説!

臨床心理士は、様々な心の問題を抱えた人に対し、心理療法などを行いながら問題の解決に導くお仕事です。この記事では、臨床心理士に興味がある人や臨床心理士を目指す人に向けて、仕事の内容や必要な資格、年収や将来性などを詳しく解説していきます。実際に臨床心理士を目指す方へ向けて、通った方がいい大学・学部についてもまとめましたので参考にしてみてください。

臨床心理士になるには・必要な資格

臨床心理士になるには、日本臨床心理士資格認定協会の資格試験に合格する必要があります。資格試験を受けるには条件があり、指定された大学院や専門職大学院を修了し、一定期間の心理臨床経験を積むことなどの条件を満たしていることが必要です。誰でも受けられる資格ではなく受験資格が必要になるので、臨床心理士への進路を見据えた学校選びが大切です。

資格試験の概要

臨床心理士の資格受験費用として、認定試験の受験申請書類を請求するために1,500円、資格審査料として3万円が必要です。そして合格後の話になりますが、臨床心理士として登録するための登録料が5万円必要になります。さらに試験は東京で行われるため、遠方の人は東京に行くための交通費や宿泊費などが必要になることも頭に入れておきましょう。
試験内容は一次試験と二次試験に分かれます。一次試験は多肢選択方式と論文の記述試験が出題され、一次試験の成績に応じて面接試験の二次試験が行われます。令和3年度の受験者数は1,804名、合格者数は1,179名で合格率は65.4%となっています。

臨床心理士の資格試験を受験するには、まず受験資格を満たすことが必要です。進路ナビでは、臨床心理士を目指せる大学や専門学校を紹介していますので、以下のページから大学や専門学校を探してみましょう。

臨床心理士を目指せる大学・短大一覧

臨床心理士を目指せる専門学校一覧

臨床心理士の仕事内容

臨床心理士としての仕事内容は、専門分野である心理療法を用いたものとなります。心理テストやカウンセリングなどの方法を使って、クライエント(相談者)の問題を解決に導くことがお仕事です。臨床心理士の専門業務として、日本臨床心理士資格認定協会では「臨床心理査定」「臨床心理面接」「臨床心理的地域援助」「調査・研究」の4つに定義しています。ここでは、それぞれについて詳しく解説していきます。

臨床心理査定

臨床心理査定とは、クライエントに対しての心理テストや観察面接からその人の特性や問題・課題を明らかにしていくことを指します。それと同様に、クライエントが抱える問題をどのようにして援助していくのかを考えていきます。臨床心理士の立場からではなくクライエント自身の立場から特徴を評価することに主眼がおかれていて、クライエントの独自性や固有の特徴を明らかにすることが目的です。

臨床心理面接

臨床心理面接はいわゆるカウンセリングで、クライエントに対する臨床心理士のもっとも中心的な専門行為です。さまざまな臨床心理学的技法を用いてクライエントとの共感や理解などの心情を構築していき、クライエント自身が自分の状態を理解して自己治癒できるように導いていきます。臨床心理面接において代表的な心理療法は、次のようなものが挙げられます。

クライエント中心療法

クライエントの話を中心とし、カウンセラー自体は脇役としてカウンセリングを行なっていく療法です。クライエントの話をしっかりと聴き、クライエント自身がどのように感じているのかを探りながら、自ら問題解決能力を取り戻していくよう援助します。カウンセラーはクライエントの話を傾聴して指示やアドバイスは積極的に行わずに、クライエント自身の気づきや成長を促します。

認知行動療法

話を聴きながら説明や提案を行い、クライエントが抱えている問題を具体的にしていく療法です。クライエントの考え方や思考法にアドバイスを行うことで、問題解決や症状の軽減を進めます。

遊戯療法

主に子どもを対象にした療法です。会話だけではなく様々な遊びを通して、クライエントが感じている心の問題を見つけて解消していくことを目的としています。

芸術療法

クライエント自身に芸術を通して自己表現を行なってもらい、治療や問題解決に繋げていく療法です。絵画や音楽、写真やダンスなど様々な方法があります。

臨床心理的地域援助

地域の方々や学校・企業などに属する人たちの心の支援を行う活動です。災害や事故・事件などの被害者に対する心理的ケアや、地域に向けた心理的な分野における専門的な情報の発信などもこの活動にあたります。

調査・研究

上記に挙げたような活動に対する調査や研究も臨床心理士の専門業務です。クライエントの心の問題がどのように生まれて解決したのか事例を研究するなど、臨床心理士としての知識や技術を向上させていくための取り組みです。

臨床心理士の就職先・活躍の場

臨床心理士の職域は多岐にわたり、様々なジャンルの就職先・活躍の場があります。ここでは、臨床心理士の主な就職先や活動の領域について解説します。

教育分野

学校という場では、様々な事情で登校や学校での集団行動が難しい生徒がいます。そういった生徒やその保護者に対し、臨床心理学を用いた心理相談を行うことが仕事です。多くはスクールカウンセラーや教育相談員、保育カウンセラーなどとしたて働きます。教育分野での主な職場は、学校や公立教育相談機関、幼稚園や予備校などです。

医療・保健分野

病院や診療所、保健所や保健センター、精神保健福祉センターなども臨床心理士の活動の場です。病院では主に精神神経科や心療内科、小児科などでの心理相談を行ないます。また、緩和ケアや高齢者医療において、本人やその家族の心理ケアも臨床心理士の仕事です。心理査定やカウンセリングだけではなく、デイケアなどの活動もおこなっています。

福祉分野

虐待や非行などの様々な問題や、発達支援など、子どもにかかわる福祉相談も行い解決への援助をします。子育て支援施設だけではなく、DV相談や母子生活支援施設などの女性相談施設、身体・知的障害などの障害にかかわる施設、特別養護老人ホームなどの老人福祉施設なども活動の場です。福祉にまつわる幅広い領域で臨床福祉士の活躍の場があります。

司法・矯正分野

少年事件など未成年者の矯正、社会適応や離婚訴訟などの家事事件において、臨床心理士が調査官として活動を行います。鑑別所や刑務所などでの受刑者へのカウンセリングや集団療法などを通じて、社会適応や再犯防止などに向けた活動をしていくことが目的です。司法・矯正分野での活動の場は、家庭裁判所などの司法関係機関、鑑別所や少年院や刑務所などの法務省関係機関、警察関係の専門的相談業務などが挙げられます。

労働・産業分野

企業内相談室やハローワーク、障害者職業センターなどでも臨床心理士が活躍しています。臨床心理士は厚生労働省が実施する「メンタルヘルス対策支援事業」においての支援専門家です。様々な心理学的支援を行い、企業や団体内でのメンタルヘルスを向上させる目的を持っています。就業相談などにおいては、職業への適正や発達障害を抱えた人への臨床心理学的援助を行い、就業のサポートを行います。

臨床心理士の将来性について

「ストレス社会」とも言われる現代において、 世代や性別を問わず心理ケアやカウンセリングの需要が高まっています。臨床心理士の活躍の場も様々な領域に広がっており、将来性においても仕事がなくなることがない職業と言えるでしょう。また、高齢化が進む現代では、高齢者本人やその家族に対してだけではなく、高齢者医療や介護に関係する職業の方への心理学的ケアも求められています。
高齢者福祉はもちろん、近年ではスクールカウンセラーや子育て支援など、若い世代への心理的援助においての需要も高いです。スクールカウンセラーは事業が始まった当時は導入校が154校でしたが、現在では2万を超える学校がスクールカウンセラーを導入しています。スクールカウンセラーを教員と同じように制度化する方針もあり、今後ますます需要が高まりそうです。現代ではいじめ問題や引きこもりなどの心理的ケアを必要とする若者が多いことから、大学においても臨床心理士が所属する相談室を設置するところも増えてきています。
需要が高まるその一方で、現状では非常勤として複数の職場で働く必要がある人や安定して仕事がない人も多く、待遇面の改善が期待されています。似たような資格がたくさんあることも待遇が向上しない原因になっていると考えられるため、国の施策として新しく「公認心理師」というカウンセラーの国家資格が設けられました。臨床心理士を目指す人は、公認心理師の資格内容もチェックしておくとより将来が安定した状態で活躍できるでしょう。
また、どこかに所属するのではなく、個人で開業する臨床心理士も増えてきています。待遇面で不安に思われがちな臨床心理士ですが、幅広い領域で活躍が期待されていることや様々な働き方を視野に入れられることなどから、今後の将来性にも期待できる職業と言えます。

臨床心理士の給料・年収相場

臨床心理士の給与の相場は、仕事をする分野によって差が出る傾向にあります。厚生労働省の調査によると、保健医療分野や福祉分野での月収は「20万円から25万円」と回答した人が最も多いです。次点で「20万円以下」「25万円から30万円」という回答が多くなっています。この分野においての月収は30万円以下と答えた人が6割以上を占める結果になりました。
教育分野においては「20万円以下」と答えた人が最も割合が高く、司法・犯罪分野では「30万円〜100万円」と幅のある回答でした。臨床心理士の収入は日本の平均年収に比べて低い数字が出る傾向にありますが、活動する分野や働き方によって大きく差が出ます。携わる分野によって給料に幅がありますが、専門性の高さによっては昇給が見込めるパターンもあるといえます。

参考:厚生労働省公認心理師の活動状況等に関する調査

臨床心理士に向いている人

臨床心理士を目指す中で、自分が臨床心理士に向いているのか不安に思うこともあるのではないでしょうか。ここでは、臨床心理士に向いている人や仕事に対しての適正などを紹介します。臨床心理士に向いているとされている人は、次のような特長がある人です。

  • 世話好きな人や誰かの役に立ちたい人
  • 心理学が好きな人
  • 人の話を聞くのが好きな人
  • 勉強好きな人や向上心の高い人

臨床心理士はクライエントの心の問題や課題を見つけて解決に導くお仕事のため、人の役に立ちたい気持ちや誰かの助けになりたいという気持ちが強い人に向いています。人の気持ちに共感したり、理解したりしてあげたいと思う人にぴったりの職業です。クライエントとの信頼を築くため、円滑な交流ができるコミュニケーション能力も欠かせません。
また、心理学を用いた仕事のため、心理学に対しての興味が強い人や、心理学が好きであることも大切になってきます。臨床心理学は日々研究が進む学問でもあるため、常に新しい知識や情報を身につける姿勢も忘れてはいけません。5年ごとに資格の再認定を受ける必要があるため、臨床心理士の仕事を続ける限り学習を続けていくことも必須になります。
反対に臨床心理士に向いていない可能性があるのは、人とのコミュニケーションが苦手な人や、自分の考えを押し付ける人、感受性が強すぎる人などが挙げられます。クライエントの援助を行う仕事のため、自分の考えを強制したり相手を正そうとしたりする人は友好的な関係を築けないことがあります。また、感受性が強すぎる人や共感力が高すぎる人は、クライエントの心の問題に引きずられすぎてしまうことも考えられます。思い当たる部分がある人は、該当する課題点を改善しながら臨床心理士の仕事を目指すようにしましょう。

他の進路やおすすめの学校も知りたいなと思った方は、こちらを参考にしてみてくださいね。

臨床心理士を目指せる大学・短大一覧

臨床心理士を目指せる専門学校一覧

臨床心理士を目指す学校の選び方

臨床心理士試験を受験するために、受験資格として指定大学院(第1種・第2種)、または専門職大学院を修了しなければなりません。学校選びの時に重要視したいのは「実習がどれだけ充実しているか」という点や、自分が勉強したい領域や分野を専門としている教員がいるかどうかという点です。指定大学院や専門職大学院を受験するには大卒以上の学歴が必要になるため、心理学を学ぶことができる大学を選択しましょう。

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