「反転授業」とは、自宅で事前学習を行い、教室でグループワークやディスカッションを通じて学びを深める授業形態のことです。アメリカの教育現場で導入された反転授業は、近年日本でも注目を集めており、学校現場や企業の人材育成に活用されています。さらにコロナ禍で自宅でのオンライン学習環境が整ったことで、より一層関心が高まっています。学生さんの中にも反転授業に興味をもっている人もいるでしょう。進路を選ぶにあたり、反転授業を取り入れている大学を知りたいと考えている人もいるかもしれませんね。本記事では、反転授業について、注目される理由やメリットやデメリットを紹介します。
反転授業とは?
一般的に学校の授業といえば、教室で教師の話を聞き、自宅でその日習った内容を復習するスタイルを思い浮かべる人が多いでしょう。
「反転授業(フリップド・クラスルーム)」とは、そのような通常の授業形態を180度「反転」させたものを指します。つまり先に自宅で学習して知識をインプットし、教室では学んだ知識のアウトプットを行うのです。
イメージしやすいよう、反転授業の具体的な流れを紹介します。
- 1.教師から予習する内容ややっておくべき課題を伝えられる
- 2.授業日までに動画やデジタル教材を用いて自宅で学習する
- 3.授業当日はグループワークやディスカッション、質疑応答など掘り下げた学習を行う
反転授業の自宅学習では、オンラインで見られる動画教材やデジタル教材を活用することが一般的です。授業では、自宅で学んだ知識の確認をしたり、学生同士でディスカッションを行ったりしながら学びを発展させていきます。
反転授業が注目される理由
反転授業は2000年代にアメリカで初めて導入されました。近年は日本でも注目を集め、小学校や高校などの学校現場に取り入れられるケースが増えています。ここでは、反転授業が注目される2つの理由について解説します。
学習効果が実証されているから
まず一つ目の理由として、反転授業の学習効果がきちんと実証されていることが挙げられます。
例えば、反転授業が導入されたアメリカの小中学校では、ビデオ教材を使うことで生徒の学習意欲が向上した事例が示されました。また、サンノゼ州立大学ではオンライン講座を反転授業の教材にすることで、従来50%だった学生の修了率を90%まで上昇させる効果がありました。
日本でもいくつかの学校で反転授業が取り入れられており、近畿大学附属高等学校や北海道大学の取り組みからは、学習進度を促進させ、生徒の意欲を育む効果が実証されています。また、2019年に行われた調査では、反転授業はこれまでの授業形式に比べて予習の精度を高め、記憶の定着に貢献する可能性が示されました。
このように様々な事例から確かな学習効果が認められているため、現在日本では小学校から大学まで幅広い学校現場で反転授業が注目されているのです。
参照:反転授業ICTによる教育改革の進展 | J-STAGE
参照:基礎科目に対する反転授業の効果 | J-STAGE
オンライン教育が普及しているから
二つ目の理由は、オンライン教育の普及です。反転授業を実施するには、パソコンやタブレットなどの環境整備が必要不可欠です。近年はインターネット環境が普及し、学校や家庭でも動画や音声を視聴できるデジタル教材を使用することが可能になりました。オンライン学習の環境整備が進んだ背景には、新型コロナウイルスの流行もあります。また、AI技術の発展により、アプリや学習ツールを用いて視聴の有無や学習理解度をチェックすることも可能になりました。
このようにオンライン上での学習環境が整備されてきたことで、教科書や資料を読むだけではなく、動画などで事前講義を受ける予習も可能になり、反転授業が注目を浴びるようになりました。
反転授業のメリット・デメリットとは?
従来の授業形式に比べて学習効果が高く、国内外で注目を集めている反転授業。反転授業の効果について触れましたが、反対にデメリットはないの?と気になっている人もいるかもしれませんね。
反転授業のメリットとデメリットを下記にまとめました。
メリット | デメリット |
---|---|
・学習効率が上がる ・意欲的に取り組める ・個別サポートができる ・自分のペースで学習できる ・アクティブラーニングが促進される | ・環境整備や技術的な課題がある ・生徒の自己管理能力に依存する ・視力低下や肩こりなど健康リスクがある |
メリットから順に、それぞれの項目について詳しく解説します。
メリット1. 学習効率が上がる
反転授業の大きなメリットとして学習効率が上がることが挙げられます。反転授業では、動画やe-learningなどの学習ツールを用いるのが一般的です。従来の授業形態では教師の講義は1回きりですが、これらの学習ツールでは、分からない箇所を何度も視聴することができます。自分の理解度に合わせて繰り返し内容を確認できるため、授業に参加する際には内容をしっかりと理解した状態で臨むことができ、効率的な学習が可能となります。
メリット2. 意欲的に取り組める
生徒が授業に意欲的に参加できることも反転授業を行うメリットの一つです。従来の授業では教師の話を聞くことが中心なので、学習への姿勢がどうしても受け身になってしまいがちでした。しかし、反転授業では事前に学んだ内容を授業で行うグループワークやディベートで活用していく必要があるため、生徒一人ひとりの意欲や積極性を高めることができます。
メリット3. 個別サポートができる
反転授業は、個別サポートがしやすい点もメリットです。通常の授業形式では、生徒一人ひとりの理解度や学習状況を把握するのが難しい場合がありますが、反転授業では事前に得た知識を活かして授業に取り組むため、教師は生徒の理解度や学習状況を事業中に把握することができます。これにより、理解が足りていない生徒や学習が進んでいない生徒に対して、個別にフォローすることが可能になります。
メリット4. 自分のペースで学習できる
反転授業で用いられる動画やデジタル教材は、ネットワーク環境さえあれば時間や場所を問わず利用できるため、自分のペースで学習を進められます。事前学習では納得いくまで何度も繰り返し視聴することができ、授業の後は復習として利用できます。また、理解度が早い生徒は動画視聴を早く終わらせ、インターネットを使ってさらに深い知識を得ることも可能です。
メリット5. アクティブラーニングが促進される
アクティブラーニングとは、生徒が受け身ではなく、自ら能動的に学ぶ学習スタイルのことを指します。具体的にはグループワークやディスカッションなどが挙げられます。反転授業では、事前に得た知識を授業内で活用し、発表したり生徒同士で話し合ったりすることで、アウトプットする機会が十分に用意されます。反転授業はこのようなアクティブラーニングの促進の一躍を担っており、主体的で深い学びを実現できる教育法として学校現場への導入が進められています。
デメリット1. 環境整備や技術的な課題がある
反転学習のデメリットとしては、環境整備や技術的な課題があることが挙げられます。自宅で事前学習を行うためには、インターネット環境を整え、パソコンやタブレットなどの端末機器を準備しなければなりません。全ての生徒が適切なIT環境やデバイスを持っているとは限らないため、技術的な格差が学習機会の不平等を生み出す可能性があります。
また、教師側も反転授業で使用する教材を作成したり講義の進め方を研究したりと、新たなスキルが必要になります。学習システムやツールなど、外部サービスの利用を検討する必要もあるでしょう。
デメリット2. 生徒の自己管理能力に依存する
反転授業は学習効率を高め、生徒の意欲を引き出す効果がありますが、その効果は生徒一人ひとりの自己管理能力によります。学習意欲の高い生徒は事前学習にきちんと取り組み、授業でも積極的に発言するため、高い成果を出しやすいでしょう。一方、学習意欲の低い生徒は事前学習を行わない可能性もあるので、学習の効果が低下することがあります。反転授業を取り入れる際は、生徒の様子に合わせたアプローチが重要です。
デメリット3. 視力低下や肩こりなど健康リスクがある
反転授業はパソコンやタブレットを使用することが一般的ですが、これにより視力低下やドライアイ、肩こり、腰痛などの健康被害が発生するリスクがあります。反転授業を行う際は、学習効率や成果ばかりに囚われず、健康面への配慮も重要です。例えば、画面との距離を30cm以上とる、勉強の合間にストレッチを行うなどの対策が推奨されます。
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まとめ
オンラインで事前学習を行い、教室でグループワークやディスカッションを行う反転授業。従来の授業形式に比べて生徒の意欲を引き出し、学習効率を高めるなど確かな効果が認められています。すでに導入している大学や専門学校もあり、成績の伸びや理解度の促進など、効果は実証済み。ネットワーク環境の整備やオンライン学習の普及に伴い、反転授業は今後もさらに広まっていくと考えられるでしょう。
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