この瞬間の経験が将来の財産に、 さまざまな人との出会いが意味を持つ

坂本 真綾 さかもと まあや さん

1980年生まれ、東京都出身。8歳の頃より子役として活躍。舞台俳優をはじめ、アニメーションや映画の吹き替えをする声優、さらには歌手や作家、ゲームキャラクター、ラジオのパーソナリティーと、幅広い分野で精力的に活動を展開。いずれの分野でも大きな存在感を示しており、代表作はアニメ「攻殻機動隊 ARISE」草薙素子役、映画「スターウォーズ」のパドメ/アミダラ役、海外ドラマ「glee」レイチェル役など、特に映画・海外ドラマの吹替は多数。

 歌手・声優として広く知られている坂本真綾さん。しかし実態は、俳優、作家など、ひと言では言い表せないくらい多彩な才能で各方面で活躍されています。声優を目指した理由を中心に、興味深い数々のお話をおうかがいしました。

初デビューはまだ8歳の時!芸歴30年間近の圧倒的な存在感

 声優としての私の初めてのお仕事は8歳の時でした。その後は、高校在籍中に歌手としてデビューを果たすことができ、さらに作詞も手がけるようになりました。そして現在は、エッセイストとしての執筆活動に加え、ラジオのパーソナリティーなど、さまざまなお仕事をさせていただいています。これまでの吹き替えのお仕事で印象的だったのは、映画「スターウォーズ」のパドメ/アミダラ役にオーディションで合格したことです。まだ大学時代のエピソードで、全世界から注目されている作品に関わることができたのはとても幸運でした。
 歌手活動は今年が20周年。歌を聴いて下さる方々の年齢層も広がり、「励まされた」「聞きながら勉強しています」といったお言葉を頂戴すると、みなさんの一生の中の節目に私の音楽が寄り添っているんだなと思います。

舞台照明の技術者だった父親の影響で、演劇が身近にある環境が将来の道を決めた

 父が舞台照明の仕事をしていたため、幼い頃から舞台を見に行く機会がたくさんありました。役者や演劇関係者のみなさんが身近にいらっしゃる環境があって、ごく自然にこの世界に飛び込むことができました。
 声優も俳優もそうですが、例えば海賊役の翌日にはお姫様役だったりと、さまざまな役を演じることができるというように、変化に富んでいる部分が、同じことを繰り返すことが嫌いな自分に合っていると思いました。けれども、キャビンアテンダントとかパティシエとか、そういう仕事にも興味を持つなど、とにかくいいなと思うものを一杯持っている女の子でした。そうは言っても、進路選択で悩んだ時期もありました。大学時代に家族が事故に遭って、リハビリテーションをしてくださった理学療法士の方に接した時、現実に目に見えて人を手助けするお仕事に比べて、歌で励ますとかお芝居をご覧いただくとかって、本当に私は人の役に立てているのだろかと疑問に思ったんですね。
 しかし、結局悟ったのは、私はほかに何もできないので、自分の得意分野を突き進むしかないということでした。学業との両立はもちろん大変でしたが、学校以外の場所で年上や先輩など、たくさんの人たちに出会えたことで勉強とは違う何かを多く学ぶことができ、とても刺激になりました。

誰にも正解が分からないものを見つけていく楽しさ。みなさんの中に自分の表現やメッセージが残る世界

 声優や俳優は演じることで、また作家や歌手は言葉で表現します。最初は演劇からでしたが、歌手デビューを果たしてからは、より一層自分というものを出すことができるようになってお仕事が楽しくなってきました。書籍や本、特にアスリートの自伝などは、読んでいて刺激を受けることが多々あります。一つの目標に迷いなく突き進んでいる人はかっこよくてヒントにすることもあるんですよ。歌手としては、アニメーションの主題歌を任されることが多いため、その作品の世界観に寄り添い、聞いた後に何かを残せる曲にしたいと考えて書き上げるようにしています。
 アニメーションのアフレコは、まだ映像やBGMが完成していないことが多いため、想像力を膨らませて臨むことが少なからずあります。例えば、屋内か屋外かなど、場面によって話し方を変える必要性もあるので、まっさらな状態から演じていくためには台本をしっかりと読み下して監督と話し合いを重ねていく必要性があります。それに、必ず人間の役とは限らないのも難しい。ロボットや魔法使い、古い時代など、自分が知らない世界のことを演じなければならず、誰にも正解が分からないものを見つけていくことが大変でもあり、しかし同時に楽しい部分でもあります。

自分が想像できることは必ずできるはず。いまからずっと未来に広がる世界が楽しみ

 自分自身が想像できることは、実際に自分にできることだと私は思っています。だから、どんな夢や目標もあきらめることなく、自分の力を発揮できる何かをつかめたら良いんじゃないかな。
 その意味では、情報収集も欠かせません。大切なのは、インターネットで調べただけでその気になるのではなく、自分自身の体と感覚で感じ取ったり、いろいろな場所に足を運んでみたり、あるいは多くの人と話をしてみたりと、自分がその場所にいる姿をイメージできるかどうかだと思います。その時・その瞬間の経験が、遠い未来の自分の力や支えになるかもしれませんから、無意味だと思わないで観察する目を持つようにしましょう。
 気がつけば、この世界に飛び込んで30年近く過ぎました。若い時は、できないことへの挑戦の毎日でしたが、年齢を重ねた分いまは遊び心も出てきて変化球を楽しむことができるようになりました。だから、この先40年・50年と頑張り続ければ、きっといまの自分には想像できない世界が待っているに違いないと、ワクワクしています。継続は力であると意識して、頑張って欲しいと思います。

INFORMATION

20周年記念アルバム「FOLLOW ME UP」絶賛発売中!
9枚目のオリジナルアルバム。デビュー時から現在にいたるまで、坂本真綾さんの20年間の歩みが凝縮され、かつこれからのあるべき姿を見つめた傑作。

【20周年記念サイト】http://www.jvcmusic.co.jp/maaya/20th/

(掲載日:2016-09-06)

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