―かなり切迫した様子が伝わってくる相談ですが、答えのない問題のようにも思います。どうでしょうか?
相談したいことが、ご両親との関係についてなのか、目指している学校についてなのか、どっちなのかが分からないんですが、私が思うには、私が今歌手という仕事をやらせてもらっているので、こういう相談をいただいたと思うんですね。
私も歌手になれるっていう機会があった時、「大学に行かないで歌手になる」って言ったら、両親には多分反対されてたと思うんですよ。親だから心配するのはよくわかるし、心配だからそういう風に言うと思うんですね。やはり、もしもの時のために色んな道を残しておくべきなんじゃないかなとは思います。
私が入っていたクワイア(合唱部)の友達に、アメリカの音大に進学した子がいるんですが、高校の時に同じような問題を抱えていたんです。その子は歌手になりたいっていう夢があったんですが、最初は両親から「先が見えないし、安定していないのはよくない」と言われたらしいんです。それで彼女は「音大に行って、音楽ビジネス関係の勉強する」と言って音大に行ったんです。本当は歌手になりたいけど、リスクが高いし、本当になれるか分からないから“私じゃ無理、先が見えないな”と分かった時点で、音楽関係の仕事をしたいなと言っていましたね。
―芸術家といっても、漠然としていてイメージが具体的ではないのかもしれないですよね。
芸術の中でどういうことに興味があるのかな?色々あると思うんですよ。
芸術関係のことを仕事にしたいなら、確かに、芸術の大学に行ったほうがいいのかと思いますが、芸術とは関係のない学校に行っても、芸術関係の趣味を続ける事ができると思います。
そういう風に具体的に色々考えてみて「僕は芸術家になりたいけど、もしできなかった場合のために、ちゃんとこういう勉強しておくよ、この資格も取っておくよ」というような条件を設定して、ご両親に話をしたらいいんじゃないかな。
―芸術関連の様々な職業についてきちんと調べて、両親に安心してもらいながら、でも自分のやりたいことをやっていくということですね。
そうですね。自分の夢はあきらめないで、何かあった時のために色々調べておくっていうのは大事だと思います。
ご両親も松尾さんが芸術家になりたいってことに反対したいわけではないと思うんですよ。なので、色々調べてみて「こういうのもあるし、他にはこういうのもあるし、こんなに僕は調べてるんだよ」という熱心さが伝われば、もしかしたら両親もわかってくれるんじゃないかと思います。そういう風に話し合ってみてはどうでしょうか。
あと、この相談を読んだときに最初、男の子と女の子では違うのかなって思いました。
―それは、どういう違いでしょうか?
現代の社会では、女の子だと結婚して、その後もずっと働くわけじゃないかもしれないし、男の人は家族を作って、そのまま仕事を続けるっていう風になる。そういう意味で、ご両親も色々考えているのかなと思いました。難しいですね。
―ストレートに言ってしまうと食べていくのに困らなければいいっていうのは考え方としてありますよね
そういう意味でも、芸術家でなくても、芸術関係に関わっていて面白い仕事って色々あるかもしれない。
―芸術で食べていくことにこだわるのか、それとも芸術活動をしながら暮らすことにこだわるのか、っていう選び方もありますよね。芸術で食べることにこだわらないなら、違う仕事をしながら芸術活動をするっていう道もあってもいいと思いますよね。
そうですね、それもあると思います。