かしこく利用する!奨学金ガイド

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現在、意欲がありながら家庭の経済的事情により進学を断念せざるを得ない高校生が相当数いるとの指摘があります。いまや時代は、全大学生の半数以上が何らかの形で奨学金を受給している状況です(日本学生支援機構「平成26年度学生生活調査」)。奨学金の最新情報や、利用する上での心構えなどを、奨学金制度に詳しい東京大学(東京都文京区)大学総合教育研究センターの小林雅之教授にうかがいました。

経済的理由で進学をあきらめないために―学資不足を補う「奨学金」について考えよう

小林 雅之
東京大学 大学総合教育研究センター 教授

こばやし・まさゆき
●東京大学大学院教育学研究科満期退学。
1999年、大学総合教育研究センター助教授、07年・同教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「大学評価」「大学経営」「学費」。
奨学金問題の第一人者として発言に注目が集まっている。著書『大学進学の機会』(東京大学出版会)、『進学格差―深刻化する教育費負担』(筑摩書房)など。

返還の必要がない「給付型奨学金」。平成29年度の新制度創設に向けて検討

奨学金にはどのような種類があるのですか?

現在の日本の奨学金は、返還する必要がある「貸与型」が主流です。代表的なのが、日本学生支援機構の奨学金ですが、こちらは利息のつかない「第一種奨学金」と、利息がつく「第二種奨学金」の二種類があります。

そしてもう一つ、返還の必要がない「給付型」を、平成29年度、国が新しい制度として誕生させることになっています。

大学や専門学校に進学するには学費や生活費が必要であり、しかもそれらは決して安価ではありません。しかし、こうした返還する必要がない奨学金制度がしっかりと活用できれば、進学を果たせる可能性は大きくなっていきます。ですから、経済的な理由で進学を簡単にあきらめることなく、一人でも多くの高校生に自分の夢や目標にチャレンジしていただきたいと思います。

「貸与型奨学金」は、返還するのが大変そうな印象です。

日本学生支援機構では、一人でも多くの若者が無理なく返還できるように、「返還期限猶予制度」や「減額返還制度」など、さまざまな支援を実施しています。また、第二種奨学金の利率についても、固定方式0・63%、見直し方式0・10%(平成27年3月卒業生実績)であり、民間の金融機関や教育ローンに比べてはるかに安く借りることができるようになっています。

しかし、現在のような経済情勢や就職環境だと、大学を卒業したとしても安定した職業に就けるとは限りません。そのため、返還しなければならない貸与型奨学金を「回避したい」とする考え方が浸透しつつあります。これは、返還がそんなに大きな負担になるのなら、アルバイトなど、自分の力で学費を工面することで卒業後に借金を背負わずに学びたいという考え方です。

一方、学費を稼ぐためにアルバイト漬けの学生生活になり、肝心の勉強に身が入らなくなってしまっては、元も子もありません。こうした状況を背景にして、返還する必要がない「給付型奨学金」の導入や拡充が非常に強く待望されています。

国として、当初は、平成30年度スタートを想定した議論が進められていましたが、政府は意欲的に、平成29年度創設に前倒しとしました。来年1月の通常国会までに法案をまとめるため、義家弘介文部科学副大臣をトップとするプロジェクトチームが議論を進めています。このチームには、私もメンバーとして加わっています。

「貸与型」より「給付型」のほうがありがたいように見えます。

注意しなければならないのは、給付型にもデメリットがあるという点でしょう。給付型は学生に奨学金を“渡し切り”にするという、返還を求めないタイプです。最大のポイントは財源、つまりお金をどこから持ってきてみなさんに渡していくかということに尽きます。

貸与型は、学生から返還してもらったお金を次世代に充てることで、少ない原資でより多くの希望者に貸しつけることができます。一方、“渡し切り”の給付型は、貸与型よりも限られた範囲の少数者、もしくは少額支援にとどまらざるを得ない現状にあります。

そこで問われるのは、どの層に、どの程度支給するのかということ。然るべき受給基準は設けるにしても、その基準を満たしているからといって必ずしも全員に支給できるとは限らない。要は、優先順位が必要となるのではないかという懸念があります。

過度なバラマキを避け、限られた財源から奨学金を捻出するなら、公平な基準を明確に規定しなければなりません。税金を財源とする給付型奨学金が、国民の理解を得られるかどうか。社会でも賛否が大きく割れているのが実情です。

奨学金を上手に活用するカギは、制度内容の正確な理解と情報

貸与型奨学金利用者の返還に対する支援策や救済プランを教えてください。

代表的なものは平成29年度に誕生する「新所得連動返還型奨学金」です。これは、利用者の負担をなるべく取り除き、無理なく返還に取り組むことができるよう設計された新制度です。具体的には、卒業後の所得に応じ、毎月の返還額が最低2千円にまで変動する仕組みです。同時に、一定の収入を得るまでは申請により返還猶予(通算10年)を受けることも可能となります。加えて、奨学金申込み時に保護者などの家計支持者の年収が300万円以下の場合には、返還猶予の期間の制限もありません。

これらの諸制度は、現時点では無利子の第一種奨学金にしか適用されませんが、将来的には有利子の第二種奨学金への適用拡大を展望しています。

奨学金制度自体が分かりにくい印象が否めません……。

奨学金制度は、選択肢を充実させるためにどうしても複雑にならざるを得ません。これは、日本に限らず、世界的な傾向です。

残念なのは、支援を必要とする低所得者層ほど、十分な知識と情報を得る機会に恵まれていないという情報格差の問題が存在することです。授業料減免や無利子奨学金受給の資格要件充足者であるにも関わらず、制度について理解が不足しているか、もしくは無知であるために活用できないでいるケースは、枚挙に暇がありません。

政府はもちろん、私たち大学側の責任も小さくありません。分かりやすいパンフレットを配布したり、あるいはインターネット上で情報を発信したり、専門家によるガイダンスを実施したりというように、広くみなさんが情報をキャッチするための多様な手段を、今後も講じる必要があります。

奨学金を有意義に活用するために、いまから心がけるべきことは何でしょうか?

まずは、積極的に情報を入手していただきたいと思います。日本学生支援機構の奨学金はもちろん、日本では個別大学・短期大学の授業料減免制度が充実しており、さまざまな制度を活用すれば、過度な負担を背負うことなく進学を実現できる可能性が高まります。いろいろな制度を研究してみましょう。

また、同機構のウェブサイト上で公開されている「奨学金貸与・返還シミュレーション」では、貸与額や返還金額などを容易に試算することが可能です。

「いま奨学金をいくら借りることができ、そしていくら返さなければならないのか」―。具体的な金額を知ることで、自分のキャリアデザインを描き出す手助けになるでしょう。意義深い進路選択を実現することができるよう応援しています。